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ヒマつぶし情報

2024.09.26

【キタコレ!】伊藤桃連載vol.52 念願の青ヶ島探訪レポート【後編】

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都心から約360km離れた、伊豆諸島の最南端「青ヶ島」。

本土から直通でいく方法はなく、また断崖絶壁に囲まれているため到達困難な島として知られるこの島に、ついに今年の夏おとずれてまいりました。その詳しい行き方は前回(https://www.village-v.co.jp/news/media/19402)ご紹介いたしましたので、今回は実際に島に滞在したときのポイントや見どころをご紹介します!!

まず、青ヶ島に訪れる前に準備しておくべきは3点。1つは、レンタカーの手配です。青ヶ島に公共交通機関はなく、またアップダウンが激しいので車のレンタルが必須。島内にレンタカーサービスは2つあるので、事前に予約をしましょう。ヘリポートもしくは船着き場に、レンタルした方の到着場所にあわせて持ってきてくれます。お値段は1日4,000円+ガソリン代でした。ちなみに一緒に行ってくれたのは仲良しの山本紗由美ちゃんです。

もう1つは、お宿の予約です。無料で利用できるキャンプスポットもありますが、レンタルなどは一切なく、また島内に日中利用できる食事処はないので、なかなかサバイバルレベルが高い場所となっています。お宿は現在3つのみ。私が宿泊したのは、2020年にオープンしたばかりの「かいゆう丸」さんです。前述したようにお食事処がないので、着いた日のお昼ご飯から3食ついて1日11,000円。民宿内で島焼酎「青酎」を含めたお酒やソフトドリンクも購入できました。

お料理上手なお母さんの「島寿司」は絶品!

毎日、というわけではありませんが1泊目の夕食にて運よくいただくことができました。

そして最後は、現金の用意です。そもそも島内にてお金を使う場所自体がそんなにないのですが、クレジットカードを使える施設はほぼありません。郵便局にて島唯一のATMがありますが、事前に用意しておくと安心です。

さあ、準備が整ったらいよいよ青ヶ島の見どころご紹介です。

お宿があるのは岡部地区という集落。ここに住居が集まっており、島唯一の商店である「十一屋酒店」や、島唯一の学校もあります。そうそう、この学校の前にて島唯一の信号も発見。人口約160人と日本で最も人口が少ない自治体の青ヶ島村ですが、交通マナーの勉強のために信号が設置されているそう。今回は訪れられなかったのですが、島の歴史を紐解く書籍が充実している図書館もあります。次回はぜひ、行ってみたい!

まず訪れたのは、フェリーがつく船着き場もある「三宝港」。この道すがらにも青ヶ島の特徴である二重カルデラを見下ろすことができて、さっそくその雄大な景色に感動していたのですが、この三宝港もまた圧巻です。黒潮の荒々しい波が波止場を打ち付け、その周りをコンクリートで打ち付けられた断崖絶壁が囲んでいました。なるほど、フェリーが着岸できないことがあるのも納得です。漁船などは、クレーンで吊り上げられて陸にあげられるそう。

そんな海ですが、夕暮れ時には凪になることもあります。今回、仲良くなった島の方々に見ていただき、海に飛び込んで遊ぶこともできました。潜ると改めて、この島が断崖絶壁の要塞のようであることが実感できます。

色とりどりの熱帯魚が泳いでいる…というわけではないのですが、海中神殿のようでむしろ神秘的。それでも、ウミガメさんと泳ぐことはできました。

そしてこの三宝港は夕陽のスポットでもあります。夜になるのを惜しむような夏の太陽が、こくこくと水平線の向こうに沈んでいく姿をただ、じっと見ていました。この時間を忘れたくないと、心に刻み込むように。

さて、お次にご紹介するスポットは、二重カルデラ。2014年にアメリカの環境保護NGOの「One Green Planet」に、「死ぬまでに見たい絶景」のも選ばれた絶景です。数千年前の噴火で島が出来て、さらに1785年に起きた天明の大噴火により、この二重カルデラができました。まずはこの二重カルデラを見下ろせる島の最高峰・標高423mの大凸部へ。

途中までは車で行くことができますが、そこからは案外急な山道を登っていきます。思わずはぁはぁと息が切れるような坂道ですが、そのぶん上から見下ろした姿は絶景!!

この二重カルデラは、すぐ近くにある尾山展望台からも見下ろせます。こちらは標高400mと少し低く、道もコンクリートで舗装されています。歩きやすくはありましたが、土の道の方が風情あるかなというのは私個人の感想。

この尾山展望台からは「東台所神社」への道もありました。こちらは縁結びの神様なのですが…失恋により錯乱して島民を7人殺したあげく、自死した若者の霊を鎮めるために建てられた神社だそう。なかなかの謂われです。

青ヶ島の特徴の一つに神社が多いことがあげられます。これは天候がライフラインを左右してしまう離島ならではの文化。病を治すのも、すべて「神様頼み」だったのです。のちほど、もう1つ神社をご紹介いたします。

二重カルデラを上から眺めたあとは、今度は下からじっくり。カルデラ内の池之沢地区へと向かいました。このエリアでは、どこか南国を思わせるシダ植物の「オオタニワタリ」が目立ちます。噴火があったため、この辺りは土もはえている植物も違うそう。

この池之沢地区では、地面からところどころ水蒸気が噴出しています。これは噴火孔の地熱によって温められた水蒸気。ここにはサウナがあるのですが、入ってびっくり、冷水が出ない。水はすべてお湯、トイレの水すらも湯気が立ちほかほかとしています。床もまるで床暖であたためられたようにぬくぬく。いわゆる“整う”ことはできないけれど、湿気たっぷりのミストサウナで心地の良い汗をながすことができました。ちなみにこちらは平日16時から、大人300円で入ることができます。

そして、この地熱を使ったのが「火の際」が語源とされている「ひんぎゃ」。噴火孔の地熱を使い、地熱釜に食材を入れて、蒸して食べることができます。「かいゆう丸」ではひんぎゃをしたい旨を伝えると「ひんぎゃ弁当」として食材を用意してくれました。蒸しあがるまでは約30分。待っている間に、通りがかった近隣の方が仕上がったゆで卵をくれました。聞くと、島で育てている鶏が生んだ卵だそう。船がつかない時期が続くと、食材が切れてしまう。そんなときの貴重なたんぱく質源にと、村で鶏を飼い始めたそうです。

蒸しあがるのを待っている間に目立ったのは可愛らしい猫ちゃんたち。地熱で温かいからご機嫌なのか、にゃんにゃんと歌うように会話をしていました。猫好きの私、そして友人には至福の時間でしたが…食事中もまるで「ご飯をおくれよ~」といわんばかりに見つめてにゃーにゃー。心苦しさを紛らわせるために、大自然の中でアニソンを聞きながら食事したのも懐かしい思い出です。

肝心のお味は、まさに驚きの美味しさ。わずか30分でお芋もふっくらほかほかになりました。ちなみに「くさや」の匂いも熱で飛んで、あの美味しいお味だけいただけます。そして素材の美味しさを引き立てる「ひんぎゃの塩」で食べればなお美味しい。このお塩も、地熱蒸気を利用して作った青ヶ島独特のものです。

さて、ここまではガイドブックにもよく書いてあるスポット。せっかくならば、島に住む方に直接案内をしていただきたいと思い、ガイドツアーもお願いいたしました。ガイドしていただいたのは、人気YouTuberでもあるかえさん。「青ヶ島ちゃんねる」にて日々、青ヶ島の魅力を発信されています。

この青ヶ島、長い歴史の中で人が住んでいなかった時期がありました。天明の大噴火の際、生き残った島民は八丈島に避難したのですが、そこから50年もの間帰還することができませんでした。なかなか調査船が到達できない地形、人が不在の間に増えたネズミの被害などが原因だったといわれています。そんな中、「島に還る」という目標を掲げて島民を先導したのが佐々木次郎太夫という方でした。かえさんは、その佐々木次郎太夫さんの子孫だそう。島の歴史に深くかかわる方によるご案内。すごく楽しみにしていました!

まず案内していただいたのは、「大杉」。入り組んだ険しい山道を行くため、観光客だけでは立ち入り禁止の場所です。うっそうと草木が生い茂る道をずんずんと進んでいくと、ふっ…と空気が変わった箇所がありました。汗ばむような夏の暑さだったのに、そこだけひんやりと冷気が漂っています。ふと上を見上げると、巨大な杉がそびえたっていました。御年240歳弱、天明の噴火後からこの島を見続けてきた大杉です。その堂々とした佇まいは、「ご神木」と呼ばれるのにふさわしい威厳がありました。

そしてもう1か所案内していただいたのが、到着したヘリポートのすぐ奥にある金毘羅神社です。打って変わってこちらは集落の中にあるのですが、こちらもまた神秘的。いくつもの鳥居がある細い参道を抜けたところに、小さな建物がありました。こちらが神社。華やかではなく素朴である様に、神様のすまう場所としての役目が感じられます。

裏手には八丈島の方角を向いた、小さな鳥居もありました。これは航海の安全を祝うための神社だそう。島にはいくつもの神社があり、40年ほど前では「巫女」さんもいました。男女問わず、神様に選ばれた人が神事に携わるもので、予知能力などもあったそう。こういった文化は離島ならではの独自性を感じます。

青ヶ島に私が訪れた目的の1つが「青酎」。島の芋、麦を原料として島独自の製法で作った島焼酎で、私の大好物なのです。香り高く、すっきりとした味わいはクセになること間違いなし。元々は離島という環境の中、旦那様のために奥さんが作っていたお酒なので、銘柄によってそれぞれの「家庭の味」を楽しめるのも特徴です。この青酎、島ではほぼ毎日18時からの無料試飲&販売会も行っています。

若い青酎はツンと…香り高く、古酒に近づいていくと丸みを帯びた味に変わっていく。青酎の魅力に改めてっ触れられた時間でした。ちなみに、島限定の「初垂れ」はなんと60度。それでもすっきりとしたコクのある味で酒好きにはたまらない1杯でした。

そして夜、ぜひ訪れてほしいのが島唯一の居酒屋「一人」。小さな店内には、朗らかにお酒を楽しむ島の人々で賑わっていました。みんなでテレビを見て、カラオケをする。ここには青ヶ島の日常があります。夕食後に行ったのでお食事はいただけなかったのが残念だったのですが、島唐辛子を使った卵焼きなど実に魅力的なラインナップでした。もちろん、「初垂れ」もあります。私も島の方々と乾杯させていただき、いろいろなお話を聞かせていただきました。そしてその中で誘っていただいたのが天体観測会。

街の明かりが少なく、空が広い青ヶ島は島のどこでも星空観測スポット。大きい道を外れると、真っ暗な空に幾千もの星が輝いていました。その中でもいくつか観測スポットがあるのですが、私が訪れたのはお宿からも歩いて行ける「ジョウマン牧場」。星空の写真を日々撮影している方が主催して、星空観測会を行っているそうでそちらに参加させていただきました。そこにあるのは、天の川が見えるほどの空いっぱいの星空。この夏の、決して忘れられない景色となりました。

夢のような時間は、あっという間。2泊3日の旅を経て、ついに旅立ちの時が来てしまいました。帰りの交通手段もヘリコプターで、八丈島へ向かいます。さあ帰るか…となったとき、仲良くなった島の方がお見送りに来てくれたのに気づき、大感激。ヘリが飛び立つ最後の最後まで、手を振ってくれる姿におもわずほろりとしてしまいました。

自然、そして人情あふれる青ヶ島に、訪れてみてはいかがでしょうか。

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