ヒマつぶし情報
2025.02.27
【キタコレ!】伊藤桃連載vol.54 戦前生まれの旧型客車を利用して作られた食堂車「Train Dining オハシ」にのってみた。

板張りの床、紺色のレトロなモケット、そして時折聞こえるSLの力強い汽笛の音。そのレトロな雰囲気を堪能しつつ、「食堂車」でお食事を楽しめる。まるでタイムスリップをしたかのような“レトロ”な旅ができると聞いて、大井川鐵道に行ってまいりました。

大井川鐵道とは東海道本線の金谷駅から伸びている、静岡県のローカル線です。なんと今でも、平日休日問わずにSLが走っている貴重な路線。SL以外にも、昔別な鉄道会社で走っていた車両が第二の“車生”を過ごしています。SLの出発駅はお隣の新金谷駅。1966年に作られた、元近鉄さんの車両に乗車して向かいます。

これもまた、レトロ…!

新金谷駅に着くとホームには、一目みただけでその年月を感じることができる、渋い車両がずらりと停まっています。そして早速準備をしているSLの汽笛の音。これから始まる食堂車の旅へと期待が高まります!!

改めて、今回乗車するのは「Train Dining オハシ」。1942年製造、戦前生まれの旧型客車を利用して作られた、大井川鐵道さんの新しい観光列車です。けん引するのはもちろん、SL。このレトロな環境の中で、静岡の味をふんだんに使ったお食事を楽しむことができます。

11時半になると、食堂車にあわせた給仕の装いをしたスタッフさんが受付をしてくれました。この「Train Dining オハシ」の乗車料金は16,800円。この中には2日間有効なフリーパスと、硬券乗車券が入っています。
受付を済ませて、さっそくホームへ!!

ホームに停まっていた客車に、蒸気機関車が連結されていました。こちらは「C10 8」。なんと製造は昭和1ケタ、1930年!作られた数も少なかったため、日本で唯一残るC10形機関車です。ホームで間近から見ると、さらに迫力満点。

「Train Dining オハシ」の車両入り口では、社長の鳥塚さん自らお出迎えをしてくれます。
さあ、そして車内に入ると…そこはまさに“昭和”。食堂車と書かれた扉をあけると…

レトロな風情ただようシックな世界が広がっていました。当時と違うところは、テーブルを作るためにボックス席の半分をテーブルにして、2名掛けになっている点。そして、その座席にはすでにお弁当、お茶、お土産が準備されていました。ああ、早く食べたい!!

お弁当のプロデュースは、静岡県内のローカルチェーンの「天神屋」さん。上段には、静岡産の人参、大根を使ったみかんマリネやう巻き、静岡県産の抹茶伊達巻や抹茶わらび餅など静岡の味がふんだん!そして中段はメイン、和牛100%ハンバーグと甘鯛のまつかさあげです。下段はご飯モノ。静岡県の学校給食定番のさくらご飯しらす和えと、抹茶いなりと、スーパーフードのマキベリーを使った巻物です。中でもハンバーグは、人気ハンバーグチェーン「さわやか」がいる、ハンバーグ激戦区静岡県でも自信のある一品だそう。
他にも昔懐かしいポリ茶、ペットボトルの川根茶と、お茶も2種類飲み比べできます。

お土産は、栗の木でできたオリジナルロゴ入りオハシ…お箸と、大井川鐵道の社紋入りグラス。どちらも、特別な一品です。ちなみにコースターも持ち帰れます。

「座席が狭く感じられるかもしれません…それは、日本人の体型が大きくなったのです。」「暖房は蒸気を使っています。もしも暑すぎたら窓を開けて、今ではレアな窓が開く車両をお楽しみください」といった、レトロな車両ならではのお話を挟みつつ、鳥塚社長の挨拶後に出発進行!

発車してすぐに、車内販売がやってきました。飲食物の持ち込みはできませんが、車内で飲み物を購入することができます。ラインナップは、ご当地フルーツを使ったサイダー、静岡麦酒そして地酒「花の舞」を使ったオリジナルラベルのカップ酒。

私は迷うことなくカップ酒をゲット!こちらは500円でした。

静岡県らしい、茶畑…

大井川の流れ。

そして神尾駅ではたぬき?!と、のどかな車窓を眺めつつ、美味しいお弁当と日本酒を味わいながら列車は進んでいきます。時折聞こえる汽笛の音と、カタンカタン…と規則正しい走行音がBGM。なんとも心地よい。

家山駅ではこれまた今ではレアな、蒸気機関車への給水シーンを見られます。ホースを使い、給水塔から水を補給するのですが、思わず水があふれちゃうシーンも。こんな姿、なかなかみられません。

終点の川根温泉笹間渡駅はもうあと1駅。その手前で、女性限定で双眼鏡が配られました。女性限定?双眼鏡??
実は川根温泉笹間渡駅の手前で大井川を渡るのですが、その際に…なんと川根温泉露天風呂が“のぞき見”できちゃうのです。といっても、もちろん公認。上半身だけが見えるような高さの柵がかかった男性用の露天風呂から、SLに向かって手を振る…というのが恒例となっており、その様を見られるのです。露天風呂以外からもたくさんの方が手を振って歓迎してくれました。

川根温泉笹間渡駅が終点ではありますが、「Train Dining オハシ」はここから折り返して、再び新金谷駅に向かいます。この駅では、昔懐かしい立ち売りの方もいました。

事前に配られた券と引き換えにいただける「SL黒アイス」の他に、静岡ミカンや特製の「SL黒肉まん」がこの日は販売。数量限定、島田市産の干しシイタケと静岡産の水煮たけのこを使用した肉まんも気になりましたが、お弁当で満腹だったのでお土産に静岡ミカンをゲット。この立ち売りは土日中心に1日2回、SLの運行に合わせて行っているそうなので、「Train Dining オハシ」の乗客じゃなくても体験することができます。

折り返しに入り、私の日本酒も2合目へ…。一緒に楽しんでくれた鉄道好きタレントの山本紗由美ちゃんと乾杯!
約100分の「Train Dining オハシ」の時間ですが、あまりにも楽しくてあっという間に時間がすぎていきます。帰路では、大井川鐵道車販の名物お姉さんの“みっちゃん”が来てくれました。

私も何度かお会いしているのですが、いつもカラカラと明るく元気な“みっちゃん”。リクエストをしたら「1曲しか吹けないんだけどね」といいつつ、ハーモニカも吹いてくれました。ここではお土産に「SL人形焼き」をゲット。車内限定のグッズもあるので、乗車された際は要注目です。

最後にちょっとしたサプライズもありつつ…(これはぜひ乗車して体験してください!)。列車はついに、新金谷駅に戻ってきてしまいました。昭和レトロな旧型客車に揺られながら、美味しいお弁当とお酒、そして心のこもったおもてなしを“味”わえる。「Train Dining オハシ」の旅、とっても楽しかったです。
大井川鐵道さんは、夜行列車など様々な観光列車を企画・運行中。よかったらぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。