ヒマつぶし情報
2024.11.07
【キタコレ!】伊藤桃連載vol.53 “食”に特化した新しい「Bistroながまれ海峡号」にのってみた。
以前、この連載でもご紹介した“日本一、貧乏な観光列車”「ながまれ海峡号」(https://www.village-v.co.jp/news/media/17526)。「マツコの知らない世界」を始め、様々なメディアにも取り上げられ…
今回、ミシュランガイド北海道にも掲載されている名店「二代目佐平次」さんが食を担当したという、さらに“食”に特化した新しい「Bistroながまれ海峡号」が運行する、という話を聞いて北海道は函館まで行ってまいりました!!
改めて、今回乗車するのは…函館から木古内を結ぶ道南いさりび鉄道。函館湾沿岸を、昭和から引き継ぐ列車でコトコトと走っていくのどかな路線です。列車から眺める津軽海峡と函館山、特に夜の車窓を彩る函館の夜景は絶景!!その絶景と函館のグルメを味わえるのがこの「Bistroながまれ海峡号」というわけです。
まずは夕刻の函館駅に集合。日本旅行さんが企画した観光列車ということもあり、改札前に集合して、しおりを渡されるところからスタートします。まるで修学旅行のようでワクワクしますよね。
そしていざホームへ!!
ブルートレインを彷彿とさせる深い紺色は、“宵の口”をイメージしたもの。そこに、イカ漁船の漁火をイメージしたぼんぼり、そして星空が彩られています。白い線は津軽海峡の水平線と函館山を表したもの…と、古い車両ですが想いがこもったラッピングが施されています。
内装も可愛らしいのですが、これは全部手作り!!実は普段は通常運行している車両なのですが、職員さん総出で、観光列車運行の度に飾り付けをしているそう。机、ヘッドレストなども取り外し可能でこの時だけ設置しています。
まずは“やわらぎ水”としてミネラルウォーターが置かれていました。
そして15:50、出発進行!!
出発してすぐに、右手にある本社から職員さんたちがお見送りをしてくれました。ほっこり。
さて、今回は“Bistro”ということで、より“食”に特化しているのがポイント。最初のウェルカムドリンクは…まさかの「昆布だしの飲み比べ」?!函館の真昆布の歴史は古く、江戸時代には幕府や朝廷に献上していたといいうれっきとした名産物。その真昆布を、吟味された調味料と真昆布のみで製造するという昔ながらの製法で仕上げている「ひろめ堂」さんの昆布だしを飲み比べします。同じ昆布でも、熟成期間によって全然、見た目も味も違うだしの世界の奥深さを学べました。お土産もいただけるのがうれしい。
そうこうしている間に最初の停車駅、上磯駅に到着!この駅では北斗市のゆるキャラ「ずーしーほっきー」によるお出迎えもありました。実は大好きなゆるキャラで、モチーフはなんとほっきずし。ずーしーとは写真も撮れます。
実にシュールでお気に入り。
停車時間は16分間あり、ホームにてずーしーほっきーグッズの他に、北斗市の名産物やいさ鉄のオリジナルグッズも販売しています。
車内に戻ると、お楽しみのお料理が来ていました。「二代目佐平次」さんが用意したのは四段お重。そのうちの最初の二段です。「真いかのファルシ」「おぐに和牛ローストビーフ」「北寄貝とハスカップのご飯」など、沿線市町の食材にこだわった献立に、思わず顔がほころびます。店主の山形さんもいらっしゃっていて、直接料理のお話を聞けるのも楽しい。
そしてこの二段に合わせるのはワイン!実は今、北斗市にワイナリーが増えているのです。その中でも今回は、「農楽蔵」さんと「ドゥエプンティ」さんから1杯ずついただけました。これがどれも、実に美味い…。実はワイン好きでもある私なのですが、東京のワインに特化したレストランなどにも置かれる、今注目のワイン。大量に製造できるわけではないので、道内でも希少なものとなっています。
極上の食事と極上のワイン。それを味わいつつ、窓を開けて北海道の風を感じる…まさに極上の時間。
津軽海峡と函館山、函館の市街を一望できる「矢不来信号所」では17分間の停車時間があり、車窓もゆったり満喫できます。
トラピスト修道院の最寄り駅であり、教会をモチーフとして渡島当別駅は停車時間がありました。お手洗いタイムでもあり、独特な駅舎を見学する事もできます。駅舎内にあるステンドグラスとキリスト像…幻想的です。
すっかり夕焼け空。車内に戻ると今度は三の段が来ていました。
今度は、日本酒に合わせたお重!「開きぼっけのコロッケ」など、こちらも創作的なお料理が並びます。
対して合わせるのは、木古内町の地酒「みそぎの舞」と、函館市の地酒「五稜」。この「五稜」の酒蔵さんはなんと、半世紀ぶりに函館にできた酒蔵さん。函館には美味しいグルメがあるのに、地酒がないじゃないか…ということで作られました。なかでもこの純米吟醸の「五稜」は、函館のいか料理に合うように作られたそう。なんとラベルも「ながまれ海峡号」オリジナル!凝っています。
そして、終点の木古内町に到着!すっかり外は真っ暗。ここでも木古内町のゆるキャラ「キーコくん」と街の方々がお出迎えしてくれました。キーコくんも大好きな伊藤、おおはしゃぎで記念撮影してもらっちゃいました。
旅はまだ終わらず、再び折り返して函館へと向かうのですが、この駅では40分弱の停車時間があります。今やってきた道南いさりび鉄道は、新幹線が開通するまではJR北海道の江差線という路線でした。
駅待合室には、私のような鉄道ファンにとっては思い出深い資料が展示された「きこない鉄道コレクション」もあります。
さらに駅前には、道の駅「みそぎの舞 きこない」があり、ここでお土産も購入できます。注目は「コッペン道士」さんの塩パン。毎日完売するほどの人気商品なのですが、「ながまれ海峡号」乗客の希望者のために、焼きたてを取り置きしてくれるのです。もちろん、私も購入。木古内町の名産物である塩とじゅわっとしたバターの旨味がたまらないお気に入りのパンです。
再び車内に戻ると、ついに最後の段であるデザートのお重がやってきました。木古内町の塩アイス、トラピストバターサンドともちろんこれも沿線の名産物。「珈琲文庫」さんのアイスコーヒーもくるのですが、まだ飲みたいなぁとはこだてワインの「年輪」を注文。お酒は先ほどのラインナップで終了ですが、車内で別途購入することもできます。こちらはおつまみ付きで700円でした。
まだまだ催し物は続きます。茂辺地駅では20分間の停車時間があるのですが、その時間を使って料理家で昆布大使でもある松田真枝さんによる昆布についてのトークショーがありました。たた食べるだけではなく、その裏側まで味わえるのも、この列車の魅力の一つ。
そして最後の最後に、この観光列車のクライマックスがやってきました。茂辺地駅をでると、まるで夜行列車のようにふっと車内の明かりが減光します。この先にあるのはきらめく函館の市街地の夜景、そして函館山。「横夜景」ともいうそう。遠くにはぼぉっと漁火もうかんでいます。旧江差線時代から変わらない大好きな車窓。そこに、函館のお酒。至福の時間でした。
楽しい時間はあっという間。“ながまれ”とは道南地方の方言で“のんびりして”という意味で、4時間強あるこの旅もついに終点、函館駅に到着です。
手作りで飾り付けられた昭和レトロな車両に乗って、極上グルメと素朴な車窓の旅へ。
「ながまれ」な時間をすごせる旅、お勧めです!