ヒマつぶし情報
2021.08.31
東山動植物園は国内有数のヤバめ動物園だと思う
突然ですが東山動物園について語ります。
まあ理由としてはヴィレッジヴァンガードとしてこれから地域の動物園や水族館と一緒に何かやれたらいいなーとか、そんな会社としての大人の事情があるらしく(まだ具体的には決まってないそうですが)、
「そんな訳だからSさん、動物好きですよね?ちょっとなんかコラム的なの書いてもらえる?」
という話が僕に回ってきまして。
たぶんね、コアラとかシャバーニさんのこととか話題沸騰中のレッサーパンダのこととか書いてほしいんだと思うんですよ。
書かねぇよ。
そんなの動物好きだから書いてほしいとかこっちに頼んできといて覚悟が甘いです。
いやコアラもレッサーパンダもゴリラも好きっすよ。フクロテナガザルのおっさんヴォイスもめっちゃ笑いましたよ実際。
でもそんなの僕なんかよりよっぽどプロのひとが既に良い記事山ほど書いてるんすよ。
そっち読めばいいじゃないですか。
だからね、ただの素人の一介の変態生き物好きとして今回は「東山動植物園のマジでヤバイ奴ら」
について本気で語ります。うっかり「Sさん動物好きなんでしょ?なんか書いてくださいよー」なんて気軽に声をかけてしまった事を今からあなたは後悔するんです。うはは
卵生哺乳類の双璧の一角「ハリモグラ」
ところで皆さん、ハリネズミ知ってますよね?昨今のペットブームですっかり人気になって見かけることも多くなりましたし。
ですがこのハリネズミ、「ネズミ」と名前に付きますがネズミとは全く関係がない動物です。
ハリネズミはネズミの属している「げっ歯目」ではなく、モグラと同じグループに属している動物なので、実はネズミとは縁もゆかりもありません。
じゃあ「ハリモグラ」に改名した方がいいと思ったあなた。
ハリモグラは別に存在します。
↑こいつがハリモグラです。
そしてもう一つややこしいことを言います。
ハリモグラはモグラとは全く関係がありません
ハリネズミはネズミじゃなくてモグラの仲間で、ハリモグラはモグラの仲間じゃない。
ちょと混乱してきますが、ここで更に混乱する情報。
ハリモグラ、赤ちゃんじゃなくて卵を産みます。
哺乳類なのに、卵を産みます。
ちょっと意味が分かりません。小学校で習った哺乳類の定義が揺らぎます。
ですが思い出してください。他に「卵を産む哺乳類」が存在している事をどこかで聞いた覚えはありませんか?
そう!カモノハシ!奴です。
現生する「卵を産む哺乳類」は、この2種類だけ。
つまり
「ハリモグラはモグラじゃなくて、カモノハシと仲間である」
が正解。
なんだこのややこしい生き物?と思ったでしょ?


↑
捕食されまいと丸まったハリモグラ。
かわいい。なにこれ。
他にもなんか毒の爪があるらしいとか、1分間に100回くらい舌をペロペロさせる事ができるとかいう謎の特技をもってるとか、ちょっと色々クセが強すぎる動物なんですが、
実は生きた姿を見られる動物園は我等が東山動植物園と、もう一つは上野恩賜動物園だけ。
日本では2か所でしか見ることができません。
そもそも海外の動物園でもあまり飼われてはいない動物です。
それもそのはず、このハリモグラという動物、オーストラリアとその周辺の島(タスマニア島とか)にしかいません。
固有種の多いオーストラリア政府は国の動物がめちゃくちゃ特殊で貴重な種類だらけだという事をよく分かっているので、野生動物の輸出入に関して厳重な規制をかけているからです。
そんな貴重でヘンテコで訳の分からん生態のハリモグラというもそもそしたかわいい動物がいつでも見られるんす、東山。
ほらちょっと興奮してきたでしょ?
じゃここでもっと興奮する奴、行っていいすか?
行きますよ?
孤高の鰐「ガビアル」
東山動植物園、実は爬虫類と両生類の展示がめちゃくちゃ充実してるって知ってました?
特にこの季節、年中適温に調整されている自然動物館(爬虫類と両生類がメインの館)は快適に長時間過ごせてほんとおススメなんですが、ここにとんでもないヤツが居るんです!


ガビアル!ガビアルかっこいいよガビアル!!
ガビアル居るとかガビアりえねぇ!!!

いや、ガビアルってそもそも何?
って思ったでしょうが、画像の通りワニです。ワニなんですがなんか一般的にイメージするワニとだいぶ違いますよね?
「クチ長っ!細長っ!折れそう!」
そう。この口が最大の特徴の激レアワニ。
見た目通り生態も色々変わってます。
まず、このワニには仲間がいません。
我々ヒトにもチンパンジーやオランウータン、ゴリラといった同じヒト科の仲間が居るのに、コイツは1種類だけで「ガビアル科」というグループを形成しています。ボッチ野郎のワニです。
ほら、親近感湧いてきたでしょ?
ちなみにぼくらが普段イメージしたりよく動物園で見たりするワニは「クロコダイル科」か「アリゲータ科」のどちらかです。
このどちらにも属していない変な方向のまま進んだ為に、明らかに普通のワニとは異なる変な見た目になっているという訳です。
そしてこのガビアル
「最大6mとワニの中でも比較的大型の部類に入るのですが、主に魚とかカニにしか食わない。小動物すらめったに襲わない」
というえらい平和主義のワニでして……
というか、口がこんなんなのであまり大きいものに無理して食らいつくとマジでポッキリ折れちゃうらしいです。
進化の結果、水中でこの長い口をブン回して魚を捉えるという形になったという事らしいですが、なぜ肉を諦めた……
そんなガビアルさんですが、生息地インドでは完全に「絶滅危惧種」です。
インド政府も様々な保護活動を行ってはいますが、なかなか個体数が回復していません。
ほっといたら100日待たずに絶滅するくらいの勢いで希少なワニです。
なので東山で見た時は「マジで?なんで居るの?」と思いました。
ちなみにこのガビアルも日本で見ることができるのはここ東山の他には、静岡の「体感型動物園iZoo」の2か所のみです。
どんだけさりげなくレアなもん展示してんだよ東山動物園!!!
ほんと行くまで知らなかったからね。ガビアル居るの。
いい歳した中年男子がワニの前で心臓バクバクして過呼吸になりそうになったんだから先に言ってよって話ですよ。
どうなってんのこれ?
東山動物園のレア動物達に思う「動物園の意義」
こういうね、激しくレアな奴がさりげなく居て、ライオンもゾウもキリンもちゃんと居て、スターみたいなゴリラがいたり、植物園もあってメダカの水族館(これも実は凄いが語りだすとヤバいので泣く泣く割愛)もあったりして、(もともと愛知県民じゃなかったので)生き物大好き少年だった頃の自分を今すぐタイムマシンで東山に引っ張ってきてやりたいくらいです。
そう、生き物好きの子供にとって動物園や水族館はどんな千葉の某有名テーマパーク()より価値があるんです!
図鑑で見たアイツが目の前に居てくれる事。生き物好きの少年少女にとってこれほど凄いことはありません。
そして子供の頃に動物園で見たあの生き物に感動した経験を持った生き物好きの子供のうちの何人かは、きっと大人になってからも生き物のこと、自然環境のこと、生態系のことに関心を持てる人になれるでしょう。
動物学者や自然科学についての重要な仕事に就くかもしれません。いや、逆に言えば今動物学者や自然科学に携わる事をやっているような人は100%動物園で目を輝かせていた子供だったでしょう。
最近、動物園は変わりつつあります。動物がより本来の自然に近い状態で、本来の生態を来場者に見せられるような施設である事が「動物にとっても、来場者にとっても」理想である。という方向にどんどん変わっていっている最中です。
そしてそれは、動物園がどんどん魅力的になっていっているという事です。
だから、お子さんがいるあなたはもちろん、大人のあなたも学生のみんなも「今の動物園」に行ってみて下さい。
そして、ちょっと違う視点で動物たちを真剣に見てみましょう。
レアな生き物を見逃さないよう、せっかくの面白い動物を見逃さないよう、説明板もちょっと読んでみましょう。
「なんだこいつ?」と思ったらその場でスマホ使って検索してみることもできます。
もしかしたら目の前に居るそいつ、めちゃくちゃ貴重で面白い動物かもしれません。
っていうか。居るんですよ、気付いてないだけで。
そこに。
それが東山動物園なんですってば!

なかのひと:ヴィレッジ本店店長
ほんとはサブカルより生き物がすき。特に爬虫類と両生類と魚、あと背骨の無い生き物全般。
ヘビは断然ナミヘビ派。
今回から動物園水族館応援記事も担当になりました。