ヒマつぶし情報
2021.03.30
【ゾッキ】大橋裕之先生の作品を初めて手に取ったのはたしか「夏の手」だった。
大橋先生の作品をはじめて手に取ったのはたしか「夏の手」だったと思う。

下北沢店のコミック担当になりたての頃、
使命感からもっとたくさんマンガを読まなくてはとヴィレヴァンらしい(どんなだ?)マンガを読み漁っていた。
それまでもマンガはそれなりに読んできたつもりだったけれど、「夏の手」のページを開いた途端それまでの僕の中の“マンガ”というイメージは覆されてしまった。

一見不安定のように見えて、
迷いの無い独特のバランスの線描、
特にあの目。
初めの頃は正直それが違和感でしかなかった。(本当にごめんなさい・・・)
しかし、
読み進めるにつれてその違和感は無くなり、
むしろあのタッチで描かれるからこそ伝わってくる独特の空気感に次第に惹かれていったのだった。
そして極めつけは表紙にもなっている女の子の汚れた顔がアップに描かれる作中のシーン、まさかこういう意味だったとは!
と度肝を抜かれたことを今でも覚えている。
だからこそ「ゾッキ」が実写映画化されるという話を聞いたときは正直一抹の不安を感じた。大橋先生の作品の魅力は実写では表現できないと思っていたからだった。

しかし実際に映画「ゾッキ」を観たあとには
その不安はすっかり消えてなくなっていた。
まず、
びっくりするくらい豪華な俳優陣たちが大橋先生作品特有の哀愁感ただようあの世界観に見事に溶け込んでいるというのが妙に可笑しくてたまらなかった。
そして大橋先生の作品は、
青春に何か不完全燃焼な思い出を抱えたまま大人になってしまったような人たちにこそ響くストーリーだと思う。
万人には共感し得ないけれど、
ある一部の人たちにだけ深く刺さる、
そんな感覚が実写映画となっても自然に伝わってきた。
三監督の原作への強いリスペクトが感じられる映画でした。

もし、僕のように「ゾッキ」実写化の話を聞いて不安に思っていた方がいるとしたならば、“安心して劇場に足をお運びください”とお伝えします 笑