12月の寒く冷えた心を、ほっと温めてくれる赤ちょうちん…そんな赤ちょうちん灯る入り口がその列車の目印。
「走る屋台」とも呼ばれ、なんと車内でほかほかのおでんに地酒を楽しめる「おでんしゃ」に今回は乗車してきました!!

「おでんしゃ」が走っているのは、愛知県の豊橋駅から出ている豊橋鉄道。今では数少ない、路面電車の路線です。
車両も実に渋く、1955年の戦後生まれ。まごうことなき“昭和レトロ”な車両が、今も現役で走っています。
「おでんしゃ」自体もすでに19年間運行していますが、今もなお予約開始とともにすぐに埋まってしまう人気ぶり。
その人気の秘密は、“あたたかさ”にありました。

運行は水曜、そして金土日の週末。今回私は、金曜日の便に乗車しました。
1810分の集合時間をめがけて乗り場に行き、まずは受付です。
明るいアテンダントさんが「伊藤さん?どうぞどうぞ!」と声をけてくれて、足早に乗車しました。
中に入ってびっくり!車内には、「おでんしゃ」と書かれたのれんがかかり賑やかに飾り付けがされています。

そして長机の上には、おでんとおつまみのお弁当と、マスに入ったカップ酒が用意されています。
こちらが、こよいの宴の場。

日本酒の他に、生ビールは飲み放題!缶チューハイやソフトドリンクなども数量限定ですが用意されています。
テーブルは大きく2つに分かれており、どちらサイドにもアテンダントさんがついていてくれていました。

まずは、このアテンダントさんの音頭で乾杯です。
実は私は1人参加。当然、まわりは全員初対面ですがアテンダントさんが1人1人に話を振ってくれて、決して“ぼっち”な気分にはなりません。福岡から来た方、地元のカップルやお友達…なんとご自身も先生になり、中学時代の先生と参加していグループも。見知らぬ人同士がほんの刹那まじりあう、まさに“屋台”のような時間が過ぎていきます。

日本酒は、地元・豊橋の福井酒造。おでんも豊橋名産のヤマサちくわです。アツアツが食べられる、嬉しい加熱式。ほかほかの温かいおでんをほおばり、地酒を味わう、実に贅沢な時間です。
アテにぴったりなおつまみ弁当もまた美味しい。気づくと車内の熱気で、窓ガラスがすっかり曇っていました。

路面電車なので、当然隣を走っているのは自動車。金曜の夜、ぴかぴかとイルミネーションで目立つ列車で宴会をしつつすれ違うのも、非日常体験で面白い。
すっかり上機嫌でお酒を飲んでいると、あっという間に終点の運動公園前についてしまいました。
車内にはお手洗いがないので、ここでお手洗い休憩タイムです。

そして、運転士さんにお話を聞く事も出来ました。運転士の今泉さんは、この車両より“ちょっと年下”のレジェンド運転士さん。現在は、バイトとしてこの「おでんしゃ」を運転しているそう。ベテランではありますがとても気さくな方で、“撮り鉄”を楽しんでいた常連の方々(学生さんかな?)とも仲良し。ずっと一緒に過ごしてきた“相棒”の「この子たち、ファンなんだよ」と嬉しそうに語っている姿が印象的でした。

さてさて、おでんにおつまみ、お弁当にと、実にボリュームたっぷりですが、事前予約をすれば生ハムやピザなどを追加購入もできます。そして福井酒造さんの四合瓶は、車内でも注文可能。すっかり日本酒気分な私は、特別純米酒の「夢吟香」を購入しました。こちらは1,950円。
一人では到底飲めないので、お近づきの印に同じテーブルの方にふるまう事にしました。こんな時間も“屋台”さながら。

休憩時間が終わった後は運動公園前を出発して、再び豊橋駅前へと折り返します。この休憩時間を含めて、約90分。
最初と最後に、アテンダントさんが集合写真を撮ってくれていました。最後の写真を見て、アテンダントさんが「最初と最後でみんな、全然表情がちがう」と、にっこり。
“宴”を通して、みんなすっかり幸せそうな顔になっていました。

乗車中には、豪華賞品つきのじゃんけん大会もあり。車内には、オリジナルグッズのガチャガチャあり。この手作り感もまた、温かい。
リピーターが多いのもうなずけます。これだけ盛りだくさんの内容で、参加は1人6,200円。
今年度はゴールデンウィークまで運行しています。年末年始、「おでんしゃ」で一杯いかがでしょうか?

おまけ:最後は運転士さんとアテンダントさんと、ほろ酔いピース!


今回の探索人

伊藤桃

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