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ヒマつぶし情報

2020.10.27

転勤族だけが知る電波の狂った町 〜謎のモニター編〜

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余計な事なんて 忘れた方がマシさ

一度は住んでみたい街は?

と尋ねられると、みなさんはどこを思い浮かべるだろうか。


「京都に住んでいたことがある」と答えると

必ず向けられるのは羨望の眼差し。


京都っていいよね!文化的!羨ましい!

ポジティブな発言に目が眩む。


「そうだ京都、行こう。」


というフレーズからも溢れ出る揺るぎない自信とプライド。

そう、みんな盲目的に京都が好きなのだ。


確かに、そこらかしこに重要文化財があり、景観の観点から整備された町並みも多い。

神社仏閣・歴史に情緒、憧れるのも無理はない。

僕も実際に暮らすまではそうだった。


しかし、一言に京都と言っても僕が住んでいたのは、

はんなり・しとやかとは程遠い、エキサイティングな京都である。


そう、それは市場の中だったのだ。

何がWOW WOW〜 この街に響くのだろう

市場の中に人が住めるの?

とみなさんの頭の上に、大きなはてなマークが浮かんでいることと思う。


事実、京都の人からの「どこに住んでるいるの?」

という質問に対し、市場と答えると皆一様に首を傾げる。


京都人から見ても本来住むところではないのだ。


外から自宅へ帰るには警備員が構えるゲートを通らねばならず、

真夜中には市場内を大型のトラックが行き交う。

朝方ともなれば、敷地内をノーヘルで走行する原付に加えて、

ターレーという謎マシンに乗り込んだおっちゃんたちが縦横無尽に駆け回るのだ。

それらをすり抜け、解体中のマグロに群がる猫たちを横目に

店へと出勤するのが僕の日常である。


無限大な夢のあとの やるせない世の中じゃ

そんな昼夜逆転の非日常な空間でとりわけ気に入っていたのが、

ふらりと入った近所の定食屋だ。


趣のある店構えに一瞬怯みつつ入店すると、

最初に目に入ったのは細やかな仕事が光る小鉢の数々。

どこか懐かしい店内には古い食卓が並び、

奥には小上がりの座敷まであるようだ。


僕に気がついた店主が調理場の中から、

小さな声で「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。

物腰は柔らかいが無口な、いわゆる職人気質な人となりが伺える。


そうそう、こういうのがいいんだよな、、、。


思わず僕の中の井之頭五郎が呟く。


数多くのメニューに迷いながらも、

ごはんに豚汁・小鉢を2つほど選んで

さて、ひと息と腰を下ろす。


店内を見渡しつつ、設置されているテレビの方へ目をやると

なぜかテレビの他に店外を映すモニターが5台設置されている。

他の席では市場での仕事終わりなのか、昼から小鉢をつまみにお酒を楽しむ人たちや、

休憩中のタクシーのおっちゃんたちが定食を食べながら談笑している。


何気なくおっちゃんたちの会話に耳をやると、

昨日、祇園で載せたおねえちゃんのことや

酔っ払いの迷惑客のことなど、他愛ない話で盛り上がっている。

午後の穏やかなひと時だ、、、。


と思ったのもつかの間、それは突然の出来事だった。


京都ならではの細長い店内を、店主が何か叫びながら奥へ駆け抜けていく。

その途端、見たこともないスピードで店外へ出るおっちゃんたち。

先ほどまでの日常の光景から一転、ざわつき出す店内。

状況を理解できないものの、これはただごとではない。


煙は見えないが間違いない、、、火事だ!!!


僕もとっさに避難体制をとろうとした時、

再び店主が叫びながら店の奥から戻ってきた。


警察が来ましたああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!


警察?火事ではない?

この庶民的な食堂で一体何が起きているというのだ、、、。


戸惑う僕に近くで酒盛りをしていた市場のおっちゃんが親切に声をかけてくれた。

にいちゃん、外に車停めてへんか?


ここでようやく僕も理解した。

そう、京都は駐禁取り締まりがとても厳しい。

そのため食堂の店主が常に店前を映すモニター5台を監視、

駐禁の見回りが来るといち早く客に危険を知らせるシステムなのだ。


なんという連携プレー

なんという団結力


〜モノを食べるときは誰にも邪魔されず、自由で救われていなければならない〜


これぞ京都らしい、細やかな心遣いが光る

一流のおもてなしなのだろう。


そうさ、常識はずれも悪くはないかな

その後、京都で暮らした数年間で

僕はこのようなハプニングを度々目撃することとなる。


タワー地下風呂住まいの人々

忍者と名乗る目立つ外人

元気と現金を交換してくれるオジサン

盗っ人はサンタクロース

文化のサラダボウル公園


初めは思い描いていた京都とのあまりのギャップに面食らった僕だが、

刺激的な毎日のおかげで、ここでの暮らしがすっかり気に入ってしまった。


僕もいつの間にやら京都の虜となっていたのだ。

他県に転勤になった今、月に2回は呟いている。


「そうだ、京都行こう。」


ピザって10回言って

ピザ,ピザ,ピザ,ピザ,,,

じゃあココは?

pizza小僧

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