ヒマつぶし情報
2018.09.21
【VVスタッフのただただ、会いたくて】みうらじゅんさん(前編)

VVM通算50号を記念した特別号で、本誌第5号にご登場以来、
何かとお世話になりっぱなしの
“M r.VV”(勝手にスミマセンです!!)、みうらじゅんさんが再び登場!。
「ゆるキャラ」や「マイブーム」などの流行語を生み出してきた「一人電通」みうらさんが60歳にして語る価値観、そして楽しい生き方とは?
インタビューは、夫婦揃って大のMJファンという、VVイオン海老名店の大沢式子が務めます!
※本記事は、VVmagazine vol.50に掲載されたインタビューの一部を抜粋しています。
僕はサブカルやオタクの意識ないから。
ただ、いらないものを集めてるだけ。
大沢 私もみうらさんのように、ライフワークとなるようなマイブームを見つけたいのですが、最初はどんなことをきっかけに「コレだ!」と思われるんですか?みうら やっぱ、それは「コレって誰が買うんだろう?」とか思った時ですかね。ほら、そこに打ち出の小槌があるでしょ?コレ知り合いの編集者からもらったんだ
けど、ハッキリ言っていらないでしょ。で、「誰が買うんだ?」「誰が買うんだ!」を毎日呪文のように唱えているうちに出会うんだよね。兵庫に打出駅ってあるでしょ?
大沢 ハイ、あります。
みうら やつは昔は打出小槌町って言ったんだって。打出の小槌伝説ゆかりの地。
大沢 へ~、知りませんでした。
みうら そんな情報いらなかったでしょ?(笑) でも勝手に入ってきますから。「それ知らないとマズイ」とか勝手に思い込んでね。その内 “興味がわいてる気”がしてきちゃうってことがあるから。で、ついつい他にも打ち出の小槌を買っちゃうんだ~。
大沢 (笑) いらないのに。
みうら うん。
大沢 分かる気がします。
みうら この中でいらないと思うものある?
大沢 (事務所内を見渡して)うーん…この(写真の)白いお面ですかね。
みうら うん、コレはいらないよねー。お面って世界中で土産物として売ってるのにね。でもコレ3万5000円もするんですよ。
大沢 えー! そんな高いものをなぜ?
みうら 30年前、初めて沖縄旅行に行った時、国際通りの蛇味線とか売ってる店に置いてあったんですよ。で、「誰が買うんだ、こんな高いもの」と思って、5年くらい後にまた沖縄に行ったら、まだあったの。その後10年くらいして行くと、まだある。南国だから表面を覆ってるビニールがパキパキに渇いて、ガラスみた
いになってて。それで、つい買ったんです(笑)。
大沢 出会っちゃいましたね~。
みうら やっぱ高いから仕事に使ったことにしようと思って領収書をもらったんだけどね。その時何かイヤ~な予感がして、帰りの飛行機で領収書を確認したら「ミルク代」って堂々と書いてあったの。3万5000円のミルク代って経費で落ちないじゃん、普通(笑)。で、「なんだろう?」って気になって調べたら、コレ「ミ
ルク菩薩」って言って弥勒菩薩の沖縄バーションなんだってことが分かってきて。
大沢 だから、真っ白なんですね。
みうら 異界から来た神だからね。
大沢 お買い上げまでは10何年にもわたる壮大なドラマがあったんですね。
みうら そのドラマにはVVがよく絡んでくるんですよ。「とんまつり(とんまな祭り)」(書籍『とんまつりJapan』発売中)でもTシャツとトートバッグのグッズを作ったり。「とんまつり」って言葉がそんなに流布してないうちからVVは先走って(笑)。だからジャッジする人が必要ですよね。
大沢 ちゃんと判断しないと。
みうら コレ読んだら「次は打ち出の小槌グッズいきましょう!」とか言い出しかねないから(笑)。
大沢 (笑) あり得ますね~。
みうら VVって「サブカルの殿堂」とか言われて、僕もそこの一派と思われがちだけど、本人は全くサブカルの意識ないですからね。だって打ち出の小槌、サブカルじゃないでしょ。
大沢 (笑) 確かに。
みうら これもよく言われるんだけど、オタクでもないと思うし。
大沢 そうなんですか?
みうら いらないものを、無理やり集めてるオタクなんていないでしょう(笑)。
大沢 なるほど~。
みうら とはいえ、せっかく作ってもらっても売れないから、さすがに悪いな~とは思ってますよ。もうチョット仕掛けて売れるものを作りたいんですけど、どうすればいいですかね? 逆に聞きますが。
大沢 うーん…狙わない方がいいんじゃないですかね? 私たちも「売らなきゃ!」思ってがんばると売れず。「どうでもええわ~」と思うものが案外、売れたりするんで。
みうら そういうもんだよね。実際、前に地方のVVで『シベリア超特急』の水野春郎さんの人形が普通のうさぎか何かの人形と同じ値段で売られてて。思わず買っちゃったんですが。だから、平等な値段っていうのもいいかも知れない。
大沢 (笑) そうだ、フィギュアといえば…私も大阪の中古のおもちゃ屋さんで買ったんですけど(と、実物を取り出す)。
みうら コレ、何年か前、4体セットで箱入りのを作ったんですよ。カエルとテングーとハニーとウシって。あと、つっ込み如来って仏像とか。でもさ、こういうものの価値ってあるようでないじゃないですか? 当然、地方の商店街だったら知らないキャラの人形100円でも買わない人がいるでしょ。
大沢 お客さまの層とものの価値の見極めをしないと、ですね。
みうら そういうの、難しいよね~。
大沢 ほかに、このテングーのスクイーズ人形も買いました。
目を付けるのが早すぎるのは遅いのと一緒。
どっちも売れないから(笑)。
みうら コレは「ザ・スライドショー」(’96年より、いとうせいこうさんと開催しているトークショー)で配ったものなんですよ。やわらかいから客席に投げて。ずいぶん前のものですけど。
大沢 そうなんですね。今スクイーズ流行ってるんで、最近のものかと。
みうら いやいや、一度ブームがあって寺の土産物でも出回ってました。コレなんかも…(実物を見せて)清水寺の大黒天。
大沢 キモチいいですね!
みうら 気持ちはいいですがね、売れてる感じはなかったね(笑)。
大沢 さすが、目を付けるのが早い。
みうら でも、早すぎるのは遅いのと一緒だからね。どっちも売れないから(笑)。
大沢 勉強になります。
みうら 待てずにすぐ出しちゃうというのが、僕の悪いところで(笑)。
大沢 やはり、機が熟さないと…。
みうら とはいえ、熟してから出すのってイヤじゃないですか? そこの塩梅が難しいですよね、何事も。
大沢 そうなると、時代に左右されないもの…カワイイ動物ものとかになるんですかね?
みうら でしょう? ってことでコレ考えたんだけど、どう?「あらいぐまセイチャン」っていう、いとうせいこうさんがアライグマになったキャラクター。
大沢 (笑)!
VVM いとうさんとアライグマって何か関係ありましたっけ?
みうら 何もないの(笑)。しかも、いとうさんのこと“セイチャン”って呼んでないしね。そもそも意味がサッパリ分からないでしょう?「せいこうHOUSE」というイベント用に僕が描いたもんだけど。
これがあらいぐまセイチャン
みうら ひょっとして勘違いしたかわいいもの好きが買ってくれるんじゃないかなーって。
大沢 よーく見れば、メガネをかけてらっしゃるんですね(笑)。
みうら よーく見れば、髪形は昔のいとうさんなんだけどね(笑)。何の情報もナシにVVに置いてあれば、「何コレ? カワイイ~」とか言って売れないかね(笑)。
大沢 本当にカワイイと思います!
みうら 早すぎるのから一周回って、普通のかわいい商品を出すみたいな(笑)。
大沢 あれ? ロゴが「SEICHUNG」になっていますが…?
みうら そう、本当は「SEICHANG」なんだけど間違えてて(笑)。しかも“C”の上に、普通は母音の上にしか付かない“^”が付いてたりして、ワケ分かんないことには変わりないんだけど(笑)。
大沢 イオンモールに入ってるVVはお子さんのお客さまも多いので売れると思いますよ。
みうら どこらへんに置けばいいですかね?
大沢 『スプラトゥーン』グッズの横あたりにそっと並べましょうか?
みうら 『スプラトゥーン』なの(笑)? あのイカのキャラの横あたりに置いていただいて(笑)。
(後編に続く)

1958年2月1日生まれ。京都府出身。武蔵野美術大学在学中の’80年に漫画家デビュー。’97年「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。
「2005年日本映画批評家大賞功労賞」受賞。’18年「仏教伝道文化賞沼田奨励賞」受賞。「ゆるキャラ」の名付け親としても知られている。著書に「『ない仕事』の作り方」(文芸春秋刊)など多数。連載多数。
記事元
こちらの記事は、ヴィレッジヴァンガード公式フリーペーパーVVMagazine vol.50で読むことができます。