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2018.06.19

シンガーソングライター 伊東歌詞太郎が小説を書く理由【VVmagazine名物対談】

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狐のお面がトレードマーク! ご存じシンガー・ソングライターの伊東歌詞太郎さんが、5月16日に自身初となる小説『家庭教室』(KADOKAWA)を発表! 2012年にニコニコ動画の「歌ってみた」カテゴリで投稿を開始するやいなや、圧倒的歌唱力と力強い歌声が話題となり、2014年にアルバム『一意専心』でメジャーデビューを果たして以降も10代を中心に絶大な人気を誇る伊東さんが、歌ではなく文章で伝えたかったものとは? 今回は「伊東さんの大ファン」と語るヴィレヴァン(以下:VV)渋谷本店の和田俊が、クールな佇まいの中に秘めた伊東さんの、熱い胸の内に迫ります!


書きたいことが尽きない限り、
灰原先生は色んな家庭を訪問し続けると思います。

出演者:シンガーソングライター/小説家 伊東歌詞太郎

ヴィレッジヴァンガード渋谷本店 スタッフ 和田 俊

和田 このたび初めての小説『家庭教室』を発表されましたが、
   小説も読むより書きたかったのですか?

伊東 いえ小説の場合、音楽とはプロセスが逆でした。

和田 小説は最初「読むことが好き」だった?

伊東 そうですね。伊東歌詞太郎になる前はバンドをやっていたのですが、
   とにかくヒマだったから(笑)。
   ライブにお客さんは入らない、CDは売れない。
   その時期に年間、多い時は千冊くらい読んでいて。

和田 せ、千冊ですか!?じゃあ1日に…。

伊東 2、3冊のペース。それくらい大好きなんです、読むことが。

和田 自分で書こうと思われたきっかけは何かあったんですか?

伊東 「何かを書こう」と思った最初のきっかけは、
   バンド時代にやっていたブログですね。

   そこで「文章を書くって楽しいな」と思って。
   そのうち読むだけではなく「いつか小説を書いてみたいな」と。
   だから、音楽と違って一応、順番を踏んでる(笑)。
   で、4、5年くらい前からかな?
   少しずつ書き溜めてはいて。

和田 お忙しい中、すごいですね。

伊東 とはいえ、プロットだけなんですけど。で、昨年、喉の病気になり。
   明けて1月に手術を終えて。2月の頭から声を出すことが
   できなくなったタイミングでKADOKAWAさんから
   「小説を書いてみませんか?」と、お声掛けがあり。

和田 すごいタイミング。

伊東 外に出たり人に会ったりするのも気を遣わせるかな~と思って
    引き籠ることを決めていた時期だったので、
   「ラッキー!」って思いました(笑)。

和田 それは運命ですね。

伊東 そう、運命。もう『ココしかない!』ってことで
   「やらせていただきます!」と。

和田 家庭教師が主人公とのことですが、
    これはご自身の経験から発想されたのでしょうか?

伊東 そうですね。バンド時代に音楽だけで食えなかったから
    家庭教師のアルバイトをやっていたんですね。
   始めは塾講師のバイトをやっていたのですが、
    家庭教師の方が時間の融通が利くので。
   やはりライブとかあるので。

和田 では、本作のテーマは?

伊東 家庭教師をやっていると普通、他人の家庭を覗くことって
   できないじゃないですか?
    それが結構、覗く…と言うと何ですけど、
   僕の場合、垣間見ることができて。
   多かれ少なかれ、どんな家庭には問題はあるんだなと。
   大小こそあれ、何かしらの問題を抱えているんだなと。
     もちろん僕も中高生の頃は問題を抱えてましたし。
   他所の家庭もこういう問題があるなとか、
     こういうふうに子供は思っているのに、両親はこう思ってるんだな
   っていうのを感じることができたんですよ。

VVM 伊東さんご自身、小学生の頃いじめを受けた経験が。
    登場人物の子供側にも何かしらの思い入れが投影されているのですか?

伊東 それはあります。あとは当時、家庭教師として
   自分がいじめられた時の経験をもとに子供たちにアドバイスと言いますか、
   話を聞いてあげてはいたんですけど、
   今ならもっとこう言ってあげられるかな、とか。

VVM ちなみに本作は「家庭教師をしている大学生・灰原巧を主人公に、
     彼が訪問した家庭が抱える子供を取り巻く様々な問題を
    オムニバス形式で描いた物語」。

伊東 そういう様々な問題に寄り添うことができたら少しは世の中のために
   なるんじゃないかなっていう思いで、僕は家庭教師というアルバイトに
   向き合ってはいたんですけど、それを今度は本の中でやってみようと。
   誰にだって問題も不満もある。でも、何とか乗り越えられたらいいな…
   第1巻、あえて1巻と言わせてもらいますが、
   そんな僕の思いをこの『家庭教室』の中には込めたつもりです。
和田 『家庭教室』シリーズとしての構想はあるんですか?

伊東 プロットもまだたくさんありますし、本書の「あとがき」にも書いたんですけど、
    僕自身まだまだ書きたいことがたくさんあって。この思いが尽きない限り、
   灰原先生は色んな家庭を訪問し続ける…
     小説の中で生き続けられたらなと、僕は思っています。

和田 主人公の先生は『ハイバラ』ではなく『ハイハラ』なんですね。

伊東 そうです。

VVM 読み方こそ違いますが、あの見た目は子供、頭脳は大人な名探偵と
      行動を共にする女のコを思い出してしまいますが、ネーミングはどこから?

伊東 (笑) いえ、そこは全然意識していなくて。編集担当者さんいわく、
    どうしても読みながら僕の顔が浮かんでくるそうなので、
    伊東歌詞太郎と一番、遠くにあるような字面と響きで決めました。

   これ言うとガッカリするかもですが、割りと思いつきで(笑)。

和田 プロットは書かれていたとのことですが、ご苦労された点は?

伊東 〆切の時間ですね。担当者さんに「2月中には書き上げますよ」って
   言っちゃっていたんです。僕の場合、プロットを結構、書いちゃう方なんで。
   あとは肉付けすれば完成かなくらいの量を書いちゃっていたから。

VVM キーワードではなく、ある程度の文章を書いていたと。

伊東 そうです。書き始めたはいいが、主人公が頭の中でいろいろな
   ところに行くわけです。あ~これも書かなきゃ、あれも書かなきゃ
   ってなったら、もう全然、終わらない。
   しかも、2月って28日までしかないじゃないですか?

和田 (笑) 忘れていたんですか?

伊東 全然認識していなくて、2月24日の時点で「でもまだ一週間もある
   …いやいやいや、ないじゃん!」みたいになって(笑)。
     最後の方はホント、ヤバかったです。

和田 音楽の活動が小説の執筆に活かされた部分はありますか?

伊東 あります。僕は音楽って芸術だと思っているんです。
   文学も芸術、絵画も芸術だし…
   僕、MVなどでお芝居もするんですけど、演技も芸術だなと。

和田 なるほど。

伊東 何かを表現するということにおいては変わらない。
   表現の手段の違いでしかないと思っていたんです。
   そのゴールとスタートというものは、音楽と何も変わらないなと実感しました。

和田 逆に違った部分は?

伊東 音楽も小説も自分が言いたいことが先にあって、そこからゴールに向けて
   進むという点は変わらないけど、その過程は大きく違いました。

   例えるなら、音楽がゴールまで瞬間移動するのであれば、
   小説はマラソンのような。メロディや歌詞は直感で
   パッと浮かぶことがあるけど、小説はその積み重ねで。
   いーや、まだまだ。もっと掘り下げることができると。
   初めて長い文章を書いたこともありますが、ものすごく疲れましたね(笑)。

和田 小説が、これからの音楽表現にも生かされることもありそうですね。

伊東 そうですね。これまでも客観的に「歌詞に特徴がある」と言われてきて。
   それは圧倒的に、僕が読んだ本の量にあると思っていたんですけど、
   自分で書いたことにより、また違うものが見えた。
   これから何かしら変化していくかも知れません。

伊東歌詞太郎
2014年1stアルバム『一意専心』でメジャーデビュー。17年10月に発売した3rdアルバム『二天一流』がオリコンウィクリー総合チャート9位にランクインした。リリース後に行われた全国ツアーは軒並みSOLD OUT。喉の手術から回復した2018年の活動が待たれる。
オフィシャルウェブサイト http://kashitaro.com/

『家庭教室』発売中
1,404円(税込)/KADOKAWA刊

家庭教師をしている大学生・灰原巧を主人公に、彼が家庭教師として訪れた家族・子供が抱える問題に真摯に向かい合い、解決していく…。伊東歌詞太郎が楽曲同様に、子供たちが抱える問題や、その心の機微を瑞々しく表現した渾身の一冊!


※本記事は「VVmagazine vol.47」掲載の対談の一部です。

 全文は、全国のヴィレッジヴァンガードおよびグループ店で配布中の

 「VVmagazine vol.47」をご覧ください。

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