昨今、国内外を問わず大人気の温泉リゾート地、由布院。涼しい風が心地よい高原にあり、町のいたるところから見られる雄大な由布岳はまさに圧巻です。そんな由布院への旅をさらに楽しませてくれるのが、今回ご紹介する「ゆふいんの森」。
実は私も乗るのが初めて!!わくわくしながら、この春乗車してきました。

「ゆふいんの森」の出発駅は博多駅。ここから鹿児島本線と久大本線を通りつつ、由布院を目指します。平日、土休日を問わずに運行していて、基本的には3往復。観光列車としては非常に本数が多く、その人気がうかがえます。確かに、私が訪れた日も満席でした。
ちなみにこの「ゆふいんの森」の車両は1世・3世と2種類あり、言葉通り1世の方がセンパイ。1989年の「ゆふいんの森」運行開始時に、それ専用として改造された車両です。今回、私は1世に乗車しました。料金は普通席運賃と指定席特急券を合わせて、博多~由布院は大人6130円。ネットで購入すると大人5600円とさらにオトクに購入できます。

お目当ての「ゆふいんの森」3号が博多駅を発車する時間は10時11分。ですが10時前には、すでにたくさんの人がホームで「ゆふいんの森」の登場を待っていました。鉄道ファンとしては嬉しいばかり。そして、まるでスターの登場かのごとく人々がカメラを向ける中、しずしずと「ゆふいんの森」1世が入線してきました。
人気の理由の一つは、そのエレガントなデザイン。イメージは「ヨーロッパの高原リゾート」という事で、「ヨーロピアングリーン」というメタリックな塗装が使われています。どことなくレトロな流線形のお顔は、1930年代のヨーロッパの車両をイメージしたもの。

内装も緑と木が基調のシックで落ち着いた雰囲気。
より車窓をワイドに楽しむために高い位置に床が設置されるハイデッカー構造となっています。

旅行客にありがたい、大型荷物置き場もあり…

さらに、2号車には旅を彩ってくれるビュッフェもあります。
こちらでは、お弁当や軽食、アルコールを含む飲料やお土産などを購入できます。

そのお隣の3号車はフリースペース。
非常にワイドな窓が特徴で、車窓をさらに楽しむことが出来ます。

制帽やボードもあり、記念写真も撮影できました。想い出にパチリ!

「ゆふいんの森」客室乗務員の方による、手作りの沿線観光案内も発見。
これから始まる旅への期待を、さらに高めてくれます。

そして今回私が乗車したのは、1号車。その理由はずばり、この前面展望を楽しめるから!!
ここにもワイドな窓が使われており、ダイナミックな車窓をより満喫できます。運転席がまる見えなのも、鉄道ファン的には嬉しいポイント。ちなみに由布院へと向かう際は、進行方向右側がお勧めです。ロゴもまたカッコイイ。

さてはて、10時11分に博多駅を発車した「ゆふいんの森」は、まずは住宅街の中を抜けていきます。10時半を過ぎるとビュッフェが利用できるので、朝食代わりに大分冠地鶏のソーセージとスパークリング梅酒をゲット。

厨房があるわけではないので簡単な物だけですが、今では希少な車内売店が嬉しい。
そして朝から、かんぱ~い。しゅわしゅわとさわやかな甘味の梅酒に、ジューシーな地鶏ソーセージ、実にたまりません。
リクライニング、フットレスト付きの椅子で、悠々とくつろぎながらいただきます。

久留米駅を過ぎると久大本線へと入り、じょじょにのどかな車窓へと変わっていきます。
日田駅が近づくと夜明ダムが見えてきました。

そして玖珠川の流れが美しい、まさに日本の原風景の中を進んでいきます。

日田駅の次に停車するのは、天ヶ瀬駅。ここには別府、由布院とならぶ豊後三大温泉のひとつである天ヶ瀬温泉があります。駅自体は決して大きくなく、ローカル線の風情ある雰囲気がとてもいい。さらに発車時にはおそらく旅館の女将さんと思しき着物姿の方を含む、地元の方がお見送りにきて手を振ってくれていて…いつか訪れてみたい温泉地の一つになりました。

この天ヶ瀬駅を出ると、龍にまつわる伝説が残る「慈恩の滝」を車窓からも楽しめます。その高さ、30m。見ているだけでも涼しくなるようなごうごうとした滝は迫力満点。こういった車窓ポイント前にはアテンダントさんが説明をしてくれ、ゆっくりとスピードを落として車窓を楽しませてくれます。

切株のような形が珍しい切株山。

映画「すずめの戸締り」にも登場。鉄道ファンならずともたまらない、シックな建造物が魅力的な豊後森機関区と転車台がある豊後森駅と…すっかり車窓に夢中になっていると、由布院駅まではあと少し。

緑の木立を抜けて…ついにどどん!と前面に由布岳が見えてきました。豊後富士ともいわれる雄大な姿は、何度見ても圧巻。思わず客席からも歓声が上がっていました。

博多駅を出てから、約2時間21分。まったく飽きる暇もなく、由布院駅に到着してしまいました。
今回乗った「ゆふいんの森」3号は別府が終点なため、この先も走っていきます。わっと多くの人々がホームに降りていきましたが、それと入れ違うようにたくさんの方が乗車していました。デビューから40年近い年月が経ってもこれほどの人気がある事に、実際乗車してみて改めてナットク。

ここから、温泉を楽しむのもよし。賑やかな湯の坪街道でお散歩するのもよし。人込みを避けて、のどかな田園風景と由布岳を楽しむのもよし。
旅路を10倍楽しませてくれる「ゆふいんの森」に乗車して、由布院を訪れてみてはいかがでしょうか。


今回の探索人

伊藤桃

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