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ヒマつぶし情報

2020.12.17

伝説の漫画がアニメとして甦る!!『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』 の生みの親・三条陸先生を直撃! その頭脳と人柄に迫った。

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(プロフィール)

三条 陸さん

漫画原作者・脚本家。1964年生まれ。『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』『冒険王ビィト』の漫画原作、『仮面ライダー』シリーズの脚本など、誰もが知る多数の傑作を世に送り出している。


『ドラゴンクエスト』。このフレーズを聞いて知らない日本人は、いないだろう。

現在でもシリーズ化が続く、言わずと知れた日本における元祖・ロールプレイングゲームである。

そして、時を遡ること1989年。

『ドラクエⅣ』の発売を目前に控え、メディアミックスの一環として『週刊少年ジャンプ』にて伝説の漫画が産声を上げた―。

それが、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』だ。

そんな作品が30年の時を経て、アニメ版がテレビ東京系列にて10月3日(土)から毎週土曜(朝9時30分〜)の放送が決定!! …ということで、原作者である三条陸先生にお話を聞いてきました。


─いきなりですが、先生の創作の原点に興味深々です!

「子供のころはウルトラマンや仮面ライダーが好きで、勝手にそれらの作品の二次創作を考えていました。当時の雑誌には円谷プロにおけるメイキング現場の記事が載っていたりして、自分も大人になったらそういう仕事に就きたいと思っていましたね」


─かなり、早熟だったんですね。

「今で言うオタクだっただけですよ(笑)。小学校高学年になっても『ゴレンジャー』を観ていましたし、中学生の頃は『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』などで空前のアニメブームが巻き起こって。まあ、いつまでも卒業できない少年時代でしたね(笑)」


─その後も卒業しないでいたから、今の三条先生があるんですね!

「ええ。大学時代もその手のサークルに入って、ストーリーを書いたり、漫画を描いたりしていて。さらに、『月刊OUT』という雑誌でライターの仕事もしていたんです。そして卒業後、友人と作ったライター集団的な会社でアニメやゲームのシナリオを書いていました」


─では、名作『ダイの大冒険』が生まれたきっかけとは?

「『週刊少年ジャンプ』でも、アニメやゲーム絡みの特集記事を書いていたんですよ。そしたら当時の担当編集だった鳥嶋和彦さんから、『ドラクエⅣ』の発売に合わせて漫画の原作やってみないかと頼まれまして。でも、ゲームをそのまま漫画にしたのではネタバレだから、漫画は漫画でオリジナルのストーリーを作ろうと」


─なるほど。そうしてあの、ゲームの世界観を活かしながらの魅力的なストーリーが生まれたわけですね!

「単純なコミカライズというのは、下手を打つと『ドラクエ』そのもののイメージも下げてしまいますからね。そこで僕は、キャラクターデザインをされている鳥山明先生が描くモンスターが魅力的だと常々思っていたので、まずモンスター島が舞台となる話を考えました。そこに、のちに勇者となる主人公がいたら面白いなと。ゲームのドラクエとは別の側面が観せられるかなと思ったんです」


─その発想で生まれた読み切りの『デルパ!イルイル!』『ダイ爆発!!!』が、ちゃんと物語のプロローグであり、伏線にもなっていますよね。

「『ダイ爆発!!!』は人気が出て連載になることを想定して考えましたからね。でも連載が始まってからは、むしろ逆算なんです。一定のゴールを決めて、そこを目掛けてストーリーを考える。そもそも当時のジャンプは、人気が出なければ10話で打ち切りでしたから。だから、10話目で一度終わってもいい構成で考えました」


─そうだったんですね!

「そうしたらありがたいことに人気が出たので、二度目の巻頭カラー回では、魔王軍の六大軍団を紹介できました。次に最初に出てくる軍団長・クロコダイン編も、ゴールを決めてしまって、そこから中身を考えていきました」


─ははあ~(ため息)!

「ただ、ゴールは決まっていても、中身は右往左往しながら考えます。自分自身で『計算が崩れたな』と思う瞬間は、読者が読むリズムも崩せるので、結果として単調にならず面白くなるんですよ。いい意味での“裏切り”の末、満足感を与えられるというか」


─ははあ~(さらに、ため息)……キャラクターの魅力やポジショニングも、そういった構造から生まれているんですね。

「ええ。例えば、最初から存在はわかっているラスボスの大魔王バーンの側近は、あいつとこいつにしよう。だったら、その二人は早いうちから出してしまった方が読者にも浸透させておけるだろう…とか、次のステージに向けて存在は晒しておくんです。また、その都度のゴールに向けて、主要キャラと敵キャラの対戦カードを決めておくんですよ。AにはBをぶつければ、よりストーリーが盛り上がるから、そこに向けてAとBの因縁付けや伏線を張っていくわけです」


─おおお、すごい! あと、キャラクターの成長劇も魅力です。特にポップは、このストーリーのキーパンチャーですね。

「ダイは当然、主役としての役割があるキャラクターですが、相棒のポップは一番の読者目線であり、僕目線なんです。なんてことはない、臆病な人間だという。僕、当時のドラクエだと『Ⅱ』のサマルトリアの王子が好きなんですよ。彼って、使い勝手悪いじゃないですか。能力が中途半端で(笑)。そんな彼っぽいのが成長していったのが、ポップのイメージです。あと、伏兵がどんどん成長していき、なくてはならないキャラになるというのは、当時のジャンプ漫画としては方程式に乗っ取っていなくて異端だったと思います」


─なるほど~確かに。魔軍司令ハドラーの成長過程も見ものです。

「彼もストーリーの流れの中で、そのへんを考えた人物ですね。邪悪で卑怯な心と、正々堂々闘いたいという心が、同居して葛藤しているとでもいうか。キャラクター性を描きながら取捨選択していきました」


─勇者アバンや獣王クロコダインといった、大人チームも魅力的ですね。

「20代前半で始めた連載の中で、30歳になった時に『ついに彼らと同年代になってしまった!』と思ったものです(笑)。だから大人目線のセリフをより多く、クロコダインのおっさんに言わせていましたね。そういえば、彼に『この世には 本当に 煮ても焼いても喰えぬヤツがいる!』という怒りのセリフを言わせた際に、当時付き合いのあったある会社の社長がすごく感動してくれて。よっぽど腹の立つ人がいたんでしょうねえ(笑)」


─アハハ! あと、当時ゲームでは静止画だった戦闘シーンに初めて動きのビジュアルを入れた漫画でもありますよね。

「そうですね。『この呪文ってこんなふうなんだろうな』と、質感がわかる漫画ならではのイメージをしながら考えました」


─片手でできる呪文、両手でないとできない呪文など、なるほど! と思いながら観ていました。

「そういう仕組みやオリジナルの呪文などを考えるのは、楽しいです」


─“メドローア”なんて、後にゲームに逆輸入されましたよね。

「嬉しい限りです。あれは強烈な呪文を考えた際、逆に全くオリジナルの呪文より“メラ”と“ヒャド”というゲームで馴染んだ呪文を合体させた方が、読者も受け入れやすいのではと思いまして」


─おおお、さすがの計算ぶりです!

「バーンの“カイザーフェニックス”も近い理屈ですね。ゲームでお馴染みの“メラゾーマ”でも、バーンが放つと姿も威力もこんなに違うぞという」


─さて、10月から本作がいよいよ完全新作アニメ化されるわけですが、話が来た時はどんなお気持ちでしたか?

「いや、単純にすげーな! と思いましたよ(笑)。スクウェア・エニックスさんともいいタイミングで意見が合致したみたいで。製作陣が『ダイ』を読んでいた世代なので、より盛り上がってくれたらしいんです」


─原作未読の世代も、新たにファンになるでしょうね。

「そうなったら、本当に嬉しい限りですね」


─例えば、漫画原作者になりたい若者に向けて、アドバイスはありますか?

「う~ん、そもそも原作者というのは、漫画家がストーリーを思い付けばいらない職業だということを前提に考えた方がいいと思います。その上で、漫画家さんや編集者に『この人が必要だ』と思わせる、何か刺激を持っていけること。自分の立ち位置に対する“たしなみ”があるかどうかが大事なのではないでしょうか」


─ではでは、最後にこれからいろんなことをやっていきたい若者へ、ひと言をください!

「自分がそうだったのですが、頼まれたことは何でもやればいいと思います。そうすれば、すぐには役に立たなくても、『あの時これをやっておいてよかった!』と思える瞬間が必ず来ます。今、自分のやりたいこととは違ったとしても、次につながる糧には絶対になりますので、自身の成長過程を楽しんでいってほしいです!」

深みがあることもさることながら、なんて優しいお言葉なんだろう…。作家性は作品に現われるというが、『ダイの大冒険』はまさに奥深くて優しい物語。往年のファン世代たちも、そしてその子供世代の少年少女たちも、一緒に楽しめる世界観がアニメというカタチで目の前に待っている。さあ、共に冒険の旅へ――!!

作品情報

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』

大人気ロールプレイングゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズの名を冠する初の長期連載漫画として、1989年『週刊少年ジャンプ』で連載をスタート。(原作:三条陸、漫画:稲田浩司、監修:堀井雄二)。魅力的なキャラクターたちが織りなす壮大な冒険譚は多くの読者の心をつかみ、単行本は累計発行部数4700万部を記録。

アニメ版がテレビ東京系列にて103日(土)から毎週土曜朝930分に放送!

©三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 ©SQUARE ENIX CO., LTD.

▶▶▶ 公式サイト https://dq-dai.com/


本記事はVVmagazine vol.75に掲載されたものの転載です。

VVmagazine vol.75はコチラ

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