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ヒマつぶし情報

2020.12.11

幼少期から小説を書き始め、MOOSIC LAB2019 映画『眠る虫』でグランプリを獲得した金子由里奈監督はおそろしい才能の持ち主だった…

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<プロフィール>

金子由里奈さん

1995年東京生まれ。立命館大学映像学部卒。大学映画部に所属中から多くのMVや映画を制作。

チェンマイのヤンキーというユニットで音楽活動も行なっている。

監督作『食べる虫』(2016)が第40回ぴあフィルムフェスティバル一次通過作品となる。

山戸結希監督プロデュース『21世紀の女の子』(2018)公募枠に選出され、伊藤沙莉主演の短編作品『projection』を監督。

同年、自主映画『散歩する植物』(2019)が第41回ぴあフィルムフェスティバルのアワード作品に入選し、香港フレッシュ・ウェーブ短編映画祭でも上映される。

長編最新作『眠る虫』はムージックラボ2019にて見事グランプリに輝いた。




「歩く」と「走る」の違いは何か? 歩きは常に片方の足が地面に着いていて、走りは両足が地面から離れる瞬間がある移動法——体育系の学部にいたので、そんな歩きと走りの違いから始まり、マラソンについての卒論を書いて大学を卒業しました。

 ですが、ムージック・ラボ2019でグランプリに輝いた映画『眠る虫』の金子由里奈監督は、もう小さい時から「まばたきする時」と「目を閉じる時」の違いをテーマに小説を書いていたと言いますから、やはり早くから感性が豊か。活躍する人は若くしてその才を現しているものです。

 そんな金子監督は1995年生まれの24歳。ですが、自我が芽生えたのはまだ3年前だと言います。

3カ月間ヨーロッパに旅というか外遊していて、フランス、ドイツ、アイルランド、スイスに行きました。スイスに大噴水のある公園があって、そこで中年男性がベンチに座っていて『この人がベンチから立ち上がる瞬間が見たい!』と思ってずっとカメラを構えていたんです。その立った瞬間、動作としては単に立っただけなんですけど、彼の中にはきっと『そろそろお腹が空いたな』とか心の流れがあって、その上で“立つ”っていう瞬間を目撃できて、なんか『これはスゴいドラマだ!』って思ったんです。そんなことを考えながらその中年男性をずっと映像で撮っていたので、その時に『こういうことを私は美しいって思うんだな』って気付いたんです。自我に目覚めたというか、自覚したっていうか

 そういった、普通であれば気に留めないような日常の些細な瞬間・変化がとても気になると金子監督は話します。

「昔書いていたものを今もたまに見返すんですけど、『まばたき』と『目を閉じる』って、同じことをしているのに時間がちょっと違うだけで違うものになる——みたいなことを、それは今でも考えますし、そういう小さいことが好きで、フェチみたいなところは今の私と繋がるなと思います」

 自我が芽生え、自分の好きなものにより自覚的になってから撮った『眠る虫』には、そんな金子監督が愛する日常の小物や小石といったものが美しく納められています。

 京都の立命館大学映像学部に進み、当初は「映画館の空間をデザインしたい」という思いがあったと話す金子監督。初の長編となる『眠る虫』については次のように語ります。

「『眠る虫』は、たとえば隣に座っている人がトイレで席を立ったことを気にするとか、映画以外のことを気にする余白のある作品を目指しました。映画館のイスのビニールが剥がれていたら、そういうことも気にすることができる映画。自分はそういうところを割と気にしちゃうので」

 映画監督に作品の見どころを聞くと「目をそらさず観てほしい」といった答えが返ってくるのが普通なので、なんだか意外な気がします。

「それこそ(長く続く)バスのシーンを観ていたら寝てしまって、『寝て起きたらまだ映画が続いている』といったことがあっても全然いいよね、と撮影をしてくれた平見(優子)さんとも話しをしていて(笑)。途中でトイレに行ったり、そこで誰かに連絡するとか、そういう映画以外の時間があって全然いいし、映画って映画館に座って映画を観る以外の時間も交差している空間だから、それを楽しんでもらいたいという思いはありますね」

 なんだか午後のお昼寝、まどろんでるみたいな不思議な感じを受ける作品です。

「以前は結構、観客を楽しませたいという、それこそ気概みたいなものがあって、ちょっと大袈裟なことをしてみたりっていうのがあったけど、今では作品は『庭』みたいな存在になってきています。通り過ぎる人がいたら通り過ぎればいいし、立ち止まって見てくれてもいい…みたいな。前はもっと頑張って遊園地みたいなことをしていたのですが、今では『庭』になりました」

 映画を作って"庭"になる。大学入学時に目指したもの(映画のある空間をデザインすること)がなんだか達成されている、と言ったらこじつけでしょうか。

 今後も映画制作を続けながら、「チェンマイのヤンキー」というユニットで音楽活動も行なっていくと言います。そして「創作みたいのは割と手段を選ばずいろいろしてきたので、ずっとしていくんだろうなっていうのは思っているし、辞めることは絶対ないと思います」と力強いコメント。ですが、ゼミの先生から贈られた「気負わず頑張ってください、僕もボチボチ頑張ります」という言葉が大好きとのことで、最後は「ボチボチ頑張ります、気負わず(笑)」と、らしい意気込みで締めてくれました。



<作品紹介>

『眠る虫』

<ストーリー>

バンド練習に向かうバスの中、芹佳那子が遭遇したのは、とあるメロディ。歌を口ずさむ老婆が抱える木箱に興味を惹かれた佳那子は、練習をすっぽかして彼女のストーキングを開始。乗客が少なくなっていくバス。夜に包まれた終着駅。名前のわからない街で佳那子がたどり着いた先は――。これは"死者"と"声"を巡る、小さくも壮大な旅の記録。

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独創的な作品を次々世に送り出す金子由里奈の初長編作品。単独での劇場デビューとなる本作では自主配給を務め、Tokiyo(And Summer Club)が劇伴を担当し映画全体の夢心地で不穏なムードを醸成している。出演:松浦りょう 五頭岳夫 水木薫 佐藤結良 松㟢翔平 髙橋佳子 渡辺紘文  監督・脚本・編集:金子由里奈

●公式twitter  https://twitter.com/film_nemuru


本記事はVVmagazine vol.75に掲載されたものの転載です。

VVmagazine vol.75はコチラ

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