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ヒマつぶし情報

2020.11.11

VVスタッフのただただ会いたくて『咲坂伊緒(漫画家)編』【VVmagazine vol.74】

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咲坂伊緒(漫画家)

大河原奈菜(ダイナシティウエスト小田原店 スタッフ)



『ストロボ・エッジ』、『アオハライド』に続く“咲坂伊緒青春三部作”の最終章『思い、思われ、ふり、ふられ』が映像化!

 価値観も育った境遇も違うヒロイン2人の恋の行方を描く青春恋愛漫画の金字塔が、実写映画&アニメとなって公開中!! 

そこで今号のVVMでは、原作者の咲坂先生に直撃インタビュー!  

気になる映像作品の話から原作コミックのマニアックな話、咲坂先生による“ふりふら”こぼれ話まで、「咲坂先生の大ファン」というVVダイナシティウエスト小田原店の大河原奈菜がお聞きします!! 



VVM 全国に約350店舗を構えるヴィレヴァン(以下:VV)の中から選ばれた幸運なスタッフが会いたかったあの人にインタビューを試みる、という小誌の名物コーナーなんですが、今回はこちら、咲坂先生の大ファンというVVダイナシティウエスト小田原店の大河原さんがお話をお聞きすることになりました。


大河原 『ストロボ・エッジ』、『アオハライド』、そして『思い、思われ、ふり、ふられ』…。先生の作品はすべて大好きです! 本日はよろしくお願いします。


咲坂 よろしくお願いします。


VVM 先生はVVに行かれたりしますか?


咲坂 昔はVVに行くことがステータスじゃないですけど、そういう憧れの存在で。職業柄あまり出歩かないのですが、今でもVVさんにはよく行かせてもらっていますね。店員さんのセンスが出まくっているポップを読むのが大好きです。


大河原 うれしいです! スタッフも励みになると思います。


咲坂 厳選されたチョイスの中からお気に入りの1冊を探すのが楽しくて。今も手元に取ってある本は大体VVさんで買ったものですね。


大河原 VVを代表して、ありがとうございます!。


咲坂 だから今日は本当に楽しみにしていたんです。


大河原 そ、そんな(恐縮!) こちらこそ、今日は夢のようです!“ふりふら”もVVダイナシティウエスト小田原店で猛烈プッシュさせていただきます。


VVM その“ふりふら”こと『思い、思われ、ふり、ふられ』は、『別冊マーガレット』(集英社刊)にて15年7月号から19年6月号まで連載。恋愛には積極的で社交的だが不器用な性格の朱里と、夢見がちで恋愛には消極的、自分に自信が持てない由奈。そして朱里の義理の弟の理央と由奈の幼なじみの和臣。同じマンションで暮らし、同じ学校に通う高校1年生の4人それぞれのさまざまな思いがすれ違いながら交差していく青春恋愛ストーリーで、このたび実写化&アニメ映画化されました。


一番ヴィレヴァンの魅力にハマりそうなのは由奈かな

大河原 いきなり変な質問で恐縮なんですけど、朱里、由奈、理央、和臣がVVに行くとしたら、それぞれどんなコーナーを目指すと思われますか?


咲坂 えーっ!?  考えたことないですけど、とりあえず由奈は中に入れなさそう(笑)。お店の品揃えの多さに気おくれしてる由奈が思い浮かびますね。


大河原 確かに(笑)。


VVM 入口でオロオロしてる由奈の姿が浮かびます!


咲坂 で、朱里は…ファッションのコーナーで。和臣はもちろん映画。理央は何だろう? うーん…(熟考)、マニアックな本とか…あ、哲学のコーナーかな? ただしファッション哲学。「これ読んでる俺って、ちょっとカッコいいかも」的なことをやりそう(笑)。


大河原 す、すみません! 4人でデートしてる画(え)を妄想しただけなのに、そんなに考えてくださって。


咲坂 でも、4人で行けば由奈も入れるだろうし、そのうち一番VVの魅力にハマりそうなのも由奈かな。


大河原 「VV」「デート」というキーワードだけで、こんなに色んなことを発想されるんですね。咲坂先生が描くキャラクターはみんな表情が豊かな理由がわかります。


咲坂 ありがとうございます。


大河原 本当に表情が細かくて…例えば唇を噛む時の表情など、一瞬の仕草に毎回キュンとしてしまうのですが、そういう一人ひとりのキャラの表情は何か参考にされているのですか? それとも今のように想像でしょうか?


咲坂 「色んな感情をする際、顔のどんな筋肉を使うのかな?」って鏡を見たりはしますね。だから参考にするのは“自分の顔”ってことになっちゃうんですけど(笑)、鏡を見ているうちに筋肉の使い方がだんだんわかってくるんですよね。


大河原 へー、そうなんですね(感心!)


咲坂 で、同じ笑顔でも笑うと目が三日月のようになる人、キツネ目のようになる人がいるってわかるようになると、色んなバリエーションを描いてみたくなるので、そこがおっしゃってくださった「表情が豊か」ということに繋がっているのかも知れないです。


大河原 理央が(「シーッ」って感じで)唇の前で指を立てる仕草や和臣が嘘をついた時のクセに代表される、男の子の細かな描写はどうされているのですか?


咲坂 私が高校生くらいのころから男の子のそういう何気ない仕草を思い留めていて。“私だけがわかればいい!”くらいの気持ちで楽しんで描く、というのはやっています。


大河原 理央にしろ和臣にしろ読むたびにキュンキュンします。


VVM 理央役の北村匠海さん、和臣役の赤楚衛二さんもキュンキュンする仕草を連発していましたが、映画とかドラマを参考にすることは?


咲坂 俳優さんのお芝居を参考にすることもあります。


大河原 参考までに、お好きな映画とかドラマはありますか?


咲坂 和臣が朱里に貸したDVD『シング・ストリート』(16年公開)です。本当に最高! あんなに泣くとは思わなかった。街を出ていきたくても出ていくことができない若者たちを描いた群像劇なので、原作の4人ともちょっとリンクしていて。『思い、思われ、ふり、ふられ』が好きな方は併せてご覧になってください。


大河原 ぜひ観てみます!


VVM VVでも先生の棚の横に置かれると思います。


咲坂 嬉しいです! VVさんを覗いてみなきゃ。


大河原 先ほどは職業柄あまり外に出ないとおっしゃいましたが、一般の高校生などは参考にされたりしないのですか?


咲坂 それこそ道行く男の子の仕草を参考にすることもありますね。“なんかいいな”って思う表情とか手の角度とか。でもチェックするというよりも“いいな”と思うものは自然と印象に残るので、それを自分の中に溜める感じです。


VVM 原作2巻のあとがきに「登場人物の中で最初はキャラがなかなかつかみきれなかったのが和臣」と。でも「高校時代のある同級生を思い出した途端、霧が晴れたようにキャラがつかめた」とありました。


大河原 天然なあまり「そんなことしたら女子が勘違いしちゃうよ~」って男子だったと。


咲坂 “そういえばこんな人いた!”って、昔の同級生に助けられることもありますね。 


大河原 あと、映画では朱里役の浜辺美波さん、由奈役の福本莉子さんも見事に表現されていましたが、セリフがとにかく素晴らしくて。「なんでこんなにも深い感情を文字に起こせるんだろう?」といつも感動するのですが、キャラクターの揺れ動く感情は、先生ご自身の経験などあっての描写なのでしょうか?


咲坂 自分が同じような状況になった時にどう思ったか? それをできるだけ思い出して、より細かく描写してみる、ということはやるようにしていて。“同じ状況で同じ感情になった時に私はこうは思わなかった”ということはセリフに書かないようにしていますね。あと作品によって、キャラクターによって微妙に表現を変えたり。朱里と由奈がそうであるように、捉え方や考え方は人それぞれだと思うので、自分の中から色んな感情を引っ張りだします。


大河原 そんなにも掘り下げていらっしゃるから読者に伝わるんですね。


咲坂 “感情にウソがないか?”は常にチェックしている感じですね。物語、物語していないか? その話を進めるためだけの感情にならないよう。


大河原 ありがとうございます。貴重なお話が聞けて感激です!


VVM では、描いていく過程で感情移入するキャラクターが変わることはありますか?


咲坂 例えば男の子だと、最初は理央の言いたいのに言えない気持ちがかわいそうで…自分で描いていて何なんですけど(笑)、感情移入していました。でも途中めちゃくちゃ幸せになったので、この子はもう大丈夫となり。で、そこからは和臣の感情が急に動き出してきて。そうすると心配にもなってきたので、見守りつつ育てる、みたいな。そんな感じでしたね。


VVM どちら派とかあるんですか?


咲坂 半々というか、どちらもです。ただし、心の中で一番好きなのは亮介。


VVM 朱里の元彼。『ストロボ・エッジ』では確か団長がお好きだったと。サブキャラに先生の本当に好きなタイプが隠れているんでしょうか?


咲坂 というよりサブキャラってあまり感情を掘り下げないじゃないですか? あっさり見られるから、魅力的に映るんだと思います。やはり主要キャラだと心の黒い部分も描かなきゃいけないから。


大河原 なるほど~。


VVM 二次元のキャラクターですが、現実の男の子と同じなんですね。誰よりもたくさん時間を過ごしているぶん、たくさんの表情を見ているぶん、欠点も見えちゃう。


咲坂 そうですね。深く掘り下げるがゆえに見えちゃいますね。


VVM ちなみに、幼なじみの和臣が由奈を好きになるという流れになりそうだったことは?


咲坂 ないです。


大河原 意外です!


咲坂 「幼なじみだからって恋情があると思ってほしくないわ」という思いで描き始めたので(笑)、「におわせもしないわよ!」って決めてました。フツーの幼なじみがいたっていいでしょ? 漫画に幼なじみが出てきたら矢印が入ると思わないで、と(笑)。


“ふりふら”は「幼なじみだからって恋情があると思ってほしくないわ」という思いで描き始めた作品です(笑)

河原 なるほど~(笑)。でも、そこが面白かったです。予定調和じゃないところが。


咲坂 私が漫画をそれほど読み込んできたわけじゃないので、幼なじみ設定に萌えを感じていなかったこともあるんですけど。


大河原 その由奈は、途中からキラキラと言いますか、本当にかわいらしい女の子に変化しますが、あれは最初から意図されていたんですか?


咲坂 していました。だから絵的なところでも少し目を大きく描いたり。理央に憧れていたころよりも、まつ毛の存在感を強めに出したり。どなたがご覧になっても由奈の心の変化がわかるようには気をつけましたね。


VVM 内面の自信が表面に出ることってありますもんね。映画では由奈がお化粧を覚えたり。髪形もおでこを出したり。そうすることで心の変化が読み取れました。


咲坂 そうですね。すごくかわいらしかったです。


大河原 また朱里は家族の問題と将来の夢に悩み、気になる和臣に本心が言えません。先生は、朱里のように悩んだ時はどうやって解決されるのですか?


咲坂 言葉に出して…「まあ、しょうがないよね」とか言ってしまうと、わりとスッとしますね。それに気づいてからは独り言のように「しゃーない」って(笑)。


大河原 和臣も言ってましたね。


咲坂 (思い出し…)あ、言ってました。本当にたくさん読み込んでくださってますね?


大河原 いいえ、そんな!


咲坂 しょうがないことはしょうがないんですよ、ホントに。切り替えるしかない。


大河原 切り替えとはちょっと違いますが、映画でも素晴らしい印象を残した街全体が見渡せる丘。和臣の大好きな場所ですが、先生にもああいった、とっておきの場所はありますか?


咲坂 スイッチを入れる時に向かうような? あるかなあ…(考える)。どこかありますか?


大河原 私は1番最初に勤めた店舗に行きます。初心に返るというか、そういえばこういう棚を作ったな。こういう気持ちで作ったなと思いだすとやる気が湧いてきます。


咲坂 すごいですね! そうやって足を運ぶのがすごいな。私の場合、とにかく出不精だから家で完結する(笑)。


VVM インタビューではよく「寝る」とおっしゃっていますね。


咲坂 そうなんです(笑)。寝るって大事。寝たい時に寝る。本当にヤバイ時は別ですけど、〆切前でも寝る時は寝ます(爆!)


大河原 それもすごいと思います(笑)!


咲坂 漫画を描いている時以外は、ほどんど寝てますね。


VVM 映画“ふりふら”では先ほどの丘の上からの景色をはじめ、学校、祭りのシーンとロケーションが本当に素晴らしくて。さすがは青春映画の巨匠、三木孝浩監督とうならされました。ああいったロケーションなども含めて映像化は意識されたのですか?


咲坂 『ストロボ・エッジ』(15年公開)、『アオハライド』(14年公開)と実写化していただいたこともあって、“もし映像化したら?”とは思いましたが、それ前提では描いていないです。


大河原 では、今回の実写化、アニメ映画化を聞かれた時は?


咲坂 “脚本家さんがかわいそう…”でした(笑)。これを脚本にするのはムリだろうなと思っていたので。でも、実写もアニメもすごく美しくまとめていただいて。三木監督、黒柳トシマサ監督にも感謝いたします。


VVM コミックスの巻頭にある先生直筆のごあいさつに「価値観が違うといって対立しなくてもいいし、お互いにその違いを受け入れたり、影響を受け合えばいいじゃん!」とありました。恋愛ものでもあり、青春群像劇でもあり、その根底にはすごくピースな発想があると感じたのですが。


咲坂 そうなんですよ! それ!!


VVM 一番のメッセージはやはりそこなんですか?


咲坂 油断していると、自分が支持しているものをけなされたりした時に「ハア?」って戦闘態勢になるんですけど(笑)、冷静になると、だからといって私自身を否定してるわけじゃないなと。「その人が好きか嫌いか、合うか合わないかの問題なだけで、別に大したことじゃない」という考えが広まったら世の中もっと楽になるんじゃないかなと思っていて。それが“ふりふら”を描こうと思ったきっかけのひとつですね。


価値観の違った人がいるからこそ、面白い

VVM 「価値観が違う」Wヒロインが主役の物語。朱里と由奈は、先生の両極端の部分を膨らませたキャラクターだったりするのですか?


咲坂 朱里、由奈の両方ありますね。基本的には朱里が多いんだけど、由奈気分の日があったりするんですよ。今まで初めての人でも気軽にしゃべれたのに今日は緊張するな、とか。だから、どっちの気持ちもわかるんです。ないですか? 日によって波があること。


大河原 わりとあります。


咲坂 その波の違いをキャラクター一人ひとりにわけて出来たのが朱里と由奈ですね。


大河原 そういう対極にいるような2人が親友になるところに憧れますが、先生の仲のよいご友人や漫画家の先生は自分とは違うタイプのことが多いですか?


咲坂 似た感覚の人は少ないですね。でも、どこかしら重なる部分があって。そこが合えばいいじゃないですかね。ちょっとでも重なって「うんうん」と、うなずき合えれば。価値観の違った人がいるからこそ、面白いわけで。別にムリして同じ価値観を持たなくてもいいと思います。


大河原 素敵なメッセージ、ありがとうございます! 重ね重ね本当に夢のような時間でした。


咲坂 私も読み切り(を中心に描いていた)時代に初めてコミックが出た際(01年発売『CALL MY NAME』)、VVさんに置いていただいた時は、すごくうれしくて。少女漫画があまり置かれていない時代でしたから、「わーっ、VVさんに選んでいただいた!」って感激しました。今日はどうもありがとうございました。


大河原 試写で拝見しましたが、実写、アニメとももう一度、劇場で観ます。ありがとうございました!




【プロフィール】

『デラックスマーガレット』1999年11月号に掲載された『サクラ、チル』で漫画家デビュー。

代表作は『ストロボ・エッジ』『アオハライド』など。2018年に、『思い、思われ、ふり、ふられ』が第63回小学館漫画賞少女向け部門を受賞。

Twitter:sakisaka10

作品情報

アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』9月18日(金)より全国公開!!

実写版“ふりふら”も大ヒット公開中!


●偶然出会った、全くタイプの違う【朱里】と【由奈】、朱里の義理の弟の【理央】と由奈の幼馴染の【和臣】は、同じマンションに住み、同じ学校に通う高校1年生。夢見がちで恋愛に消極的な由奈は、理央に憧れるが、自分に自信がなく一歩踏み出せずにいる。

理央はかつて朱里に想いを寄せていたが、親同士の再婚により、気持ちを告げられないまま、想いを胸のうちに抱えていた。

また、恋愛に対して現実的な朱里は、率直でどこかつかみどころない和臣のことが気になり出し、割り切れない初めての感情に戸惑う。

そして和臣は、ある“秘密”を目撃し、葛藤を抱えることになり…。

それぞれの思いは複雑に絡み合い、相手を思えば思うほどすれ違って−。


原作:咲坂伊緒「思い、思われ、ふり、ふられ」(集英社マーガレットコミックス刊)

監督:黒柳トシマサ

キャスト:島﨑信長 斉藤壮馬 潘めぐみ 鈴木毬花

主題歌:BUMP OF CHICKEN「Gravity」(TOY’S FACTORY)

アニメーション制作:A-1 Pictures

© 2020 アニメ映画「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会

© 咲坂伊緒/集英社

原作「思い、思われ、ふり、ふられ」1〜12巻も絶賛発売中!



本記事はVVmagazine vol.74に掲載されたものの転載です。

VVmagazine vol.74はコチラ

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