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ヒマつぶし情報

2019.10.15

【VVmagazine】まっすぐなヒネクレものが生み出した大ヒット本『妄想国語辞典』ができるまで。

このインタビューは2019年9月25日発行VVマガジンvol63に掲載された記事の転載です。

 VVmagazine読者にはおなじみの連載、「22世紀のコトバ」の……って、あれ、ご存じないですか?ほら、このページの右の端っこにある、タテ書きの小さな文字の、そうそう、それです!

一応ご説明しますと、世の中にまだない言葉(まったく慣用されていない慣用句、とでもいいますか)を妄想して、勝手に例文まで作ってみる、というジワジワとハマってしまう企画です。まずはぜひ、今号の「22 世紀の…」をチェックしてみてください。

気がつけば毎号での連載はすでに4年以上(!)というこの企画、気がつけば『妄想国語辞典』という一冊の本になっており、さらに気がつけば大ヒット中…という状態に。

これは放ってはおけない!ということで、連載の発案者であり、筆者であり、もちろん書籍の著者でもある、野澤幸司さんのもとへ。

――いつもお世話になっております。しかしまあ、絶妙なヒネクレ感とあるある感が気持 ちいいコトバの数々ですよね。そのセンスがあれば、きっと子供の頃もクラスNo. 1のオモ ロいヤツだったんでしょうね。うらやましいです。

「いや、実は…小学校低学年くらいまでは悪口なんてひと言も言わない、それはそれは奥ゆかしい子供だったんです。両親もマジメな人間ですし。だから、いじめのターゲットになったこともありましたね…」

――意外にも、そうなんですね!でも、そこからこのセンスを身につけ、さらには大手広告代理店のコピーライター (現在)に…。そのストーリーが気になって仕方がありません。

「クラスでも目立たない存在だったのですが、ある時、クラス内のちょっとした出来事に 対してツッコミみたいなコトバを発したら、それがうまくいって。それから『おもしろい視点でコトバを置いていくこと』は、自己防衛にもなる上に自分に向いているんじゃないかとも感じるようになりました。最初は小さいクラスでの出来事でしたが、その教室がどんどん大きくなったのが今…ということなのかも知れませんね」

――(うぅ、なんとお上手な表現…)そこからコトバや「おもしろい視点」を極める道が始まったわけですね。

「小学校高学年からはラジオにハマり、三宅裕司さんの『ヤンパラ』にはじまり、ナインテ ィナインさんの『オールナイトニッポン』はよく聴きましたね。ハガキ職人の方々のネタがおもしろくて、その斜めな着眼点に心をひかれ、自分でもハガキを送りましたね」

――そうなると「ハガキ職人→放送作家」という道、まっしぐらですね!

「いや、そう思っていたんですが、ラジオの放送作家になる方法が分からなくて(笑)。 なので、就職活動でとりあえずラジオ局を受けてみるも落ち、さらにテレビ局も落ち…全滅の末に、たまたま辿り着いた広告のコピーライターの学校で今の仕事に強い興味を持ちまして。お題に対してコトバやアイデアで応える、という点ではやりたいことと同じだ!と。その後、なんだかんだで広告代理店に入社できたのですが、配属先は営業で。さらに次に転職した会社でも、制作も営業も両方やらなければいけなくて…」

――コピーライターを目指す野澤さんからしたら、もう絶望的な遠回りですね。

「その時はそう思ったんですけどね。でも実は、そこで得たものこそが大きくて。これまで自分の視点のみで『おもしろい』を表現しようとしていたんですが、顧客(クライアント)に直接向き合うことで、びっくりするような気づきやご担当者の方の商品への熱い思いなどをいっぱい吸収することができたんです。その中で、『この知識、この人の思いをきちんと伝えないと!』という、自分の視点だけじゃない『新しい軸』が加わり、それらをコピーで伝えてみたら初めて褒められまして。それは発見でしたね。『コミュニケーシ ョンってこういうことか!』と。その後、広告の賞などもいただくことができ、今の会社でコピーライターとしてやっています」

――なるほど。その視点というか考え方は『妄想国語辞典』や『22世紀のコトバ』でも表現されている、というわけですね。

「はい。自分の妄想だけではなく『誰かの軸』も入れてみる。それをVVMの読者に届けてみよう!ということでスタートしました。日本語でないと成り立たない『行間』みたいなものを表現したいという思いもありましたね。コトバを考 える中で、すべてに通わせているのは『共感』です。『言われてみるとそうだ!』という。それは『自分』と『世の中』の2つの視点があってこそ生まれるもので、その中にはシニカ ルなもの〝も〞ある…という」

――いや、シニカルなものだらけですが(笑)。でも、なんなんでしょう、シニカルなのに、誰もイヤな気分にさせず、むしろ楽しくするこの感じ…やはり「共感」があるからなんですね。

「コピーライターって毒舌な人が多い気がします(笑)。でも実はめちゃくちゃ褒め上手でもあると思うんですよね。切れ味はダークでも、結果的に明るく楽しい『陽』の方向にもっていくという。だから悪口じゃないんですよね。悪口と毒舌はまったく別のもので、やっぱり毒舌には共感があると思うんです」

――なるほど。野澤さんが妄想するコトバの数々が絶妙に気持いい理由、そこにあるわけですね。では最後に、野澤さんのように好きなこと(野澤さんの場合はコトバ)をずっと、大人になっても追いかけ続けるためのコツや方法ってなんなんでしょうか。それはもう、中年編集者(=筆者)としても知りたいです!

「コピーライターの僕の場合で言いますと、いかにコピーを書くか…じゃなくて、それ以外のことを経験するか、ですね。好きなことへの大きな『衝動』を持っていることは本当に大事です。でも、憧れだけでは実は何も見えていなくて、裏側やそこにある仕組みを知ってこそ、世の中に受け入れられるようになるし、ビジネスにもなる。挫折やつらい経験、いわゆる『社会の荒波』が教えてくれることってとても大事で、それがないと、夢や野心はあっても行きたい場所にたどり着けない。自分の中に飛びたい衝動(燃料)があって、その上できちんと目的地に着陸する技術を世の中に学ぶ。それで初めて、高いところを飛べるような気がします」

――好きだからこそ見落としてしまうポイントかも知れませんね。勉強になりました!ではやはり、野澤さんはこれからも燃料を補給しつつ、今と変わらぬ方向に飛び続けるのでしょうか?

「コピー、執筆などカタチは いろいろありますが、ずーっと、コトバからは離れないようにしたいですね。『伝える技術』は年をとっても変わらないと思うので、一生やり続けたいです。ほら、たまに、むちゃくちゃ話のおもしろいおじいさんっているじゃないですか。目指すのはそこでしょうか(笑)」

『妄想国語辞典』(扶桑社)

野澤幸司 著/ 1000円(+税)/発売中

茨城県牛久市出身。ハガキ職人を経て、コピーライターに。現在は広告代理店 「博報堂」でクリエイティブディレクターとしても活躍中。広告だけなく執筆活動など(ただいま新しい著書の執筆中!)、コトバを追いかけ続けている。


本記事はVVmagazine vol.63に掲載されたものの転載です。

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