ヒマつぶし情報
2018.02.22
あれもラブ、これもラブな ロマンス幻想本ベスト3
乱歩先生の変質系性愛短編最強カード。汽車で偶然同席した風呂敷包みを持つ男との会話で動き出す物語的展開手法! なんと叙情的!『銀河鉄道の夜』しかり『魍魎の匣』しかり車中の会話って印象に残りません? パトレイバー2で荒川が「周りの景色が動くことによって、自分は限りなく静止に近づく」(うろ覚え)と言った直後に物語が急展開しましたが、予兆みたいなものを感じてしまうんでしょうか、ね。
『押絵と旅する男』
江戸川乱歩 著/光文社
新生態系の世界が描かれ、難解な漢字を用いた表現が頻出してもどこかで聞いた語感で、髄液がグワングワンと揺さぶられるこの感じ…もしかしてXXX…。そんな新生態系軟体生物万々歳ハードSFにもラブ、あります。異形の土師部(はにしべ)くんと鳴鏑(なりかぶら)くんが愛の行く末を真剣に悩んだりして。軟体異形だって恋に恋したりすんじゃん!って。ロマンスは異形×異形にも存在します!
『皆勤の徒』
西島伝法 著/東京創元社
現代科学未到の技術が実現可能になったら…なんて世界設定の中にも、ラブ。それは実存とはほど遠いところにある疑似生命体との、ラブ。擬似生命体は、映像の中の美少女よりも実存に近いが身体のない、立体虚像。そんな実体すら存在しない虚像に魅入られる男の一方的な愛の囁きの数多。今まさに起こり得る、進化する虚像仮想妄想とのロマンス!! それを戦時中に想起するイマジネイションにド肝抜かれ!
『モレルの発明』
アドルフォ ビオイ・カサーレス 著/水声社
蓑田敦司(36)滋賀県在住/イオンモール草津店店長
いつまでも初恋のドキドキを求める僕です。そんな僕も今はもっぱらタムリエルでゴブリンと戯れるのが日課。いい加減、毒蛇の短剣、鋭利でろ。
※プロフィールは雑誌掲載当時のものです。
『東京グラフィティ』#143(2017年4月号)掲載